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絆 5

 光希は堪らず、股間に手を伸ばした。そこはすでに勃ち上がっている。目を瞑ってそこをかこうとした瞬間、浴室のドアが勢いよく開けられ、驚いて光希はそちらに視線をやった。  そこには晃希が立っている。光希は驚いて立ち上がろうとしたが、それよりも早く晃希が動き、光希の肩と後頭部を掴むと、光希のうなじに噛みついてきた。 「いっ!」  晃希の歯が食い込むのが分かる。痛みに前屈みになると、晃希は次々と光希の肩に歯を立てた。光希は全身で抵抗をするが、殴られるようとも晃希はやめない。  光希は何とか風呂の呼び出しボタンに手を伸ばし、それを押した。しかし構わず晃希は光希の肩を噛み続けた。久我山のつけた跡を、全て消そうとしている。  それだけではなく、晃希は光希の股間に手を伸ばしてきた。光希はその手をぎゅっと握ってそれを阻止する。 「やめろ!」 「何で? してる途中だったんだろ。続き、してやるよ」 「ふざけんなっ」  以前触って来ようとした時とは、明らかに晃希の匂いは違っていた。晃希は興奮をしている。光希は身に危険を感じて身を丸めた。 「何を思い出した。この傷口に、誰を思った」  晃希は低い声で言う。抑揚のない声から感じるのは怒りだ。 「やめろ。だめだ」  晃希はぎゅっと丸まる光希のペニスを触ることは諦めたのか、手を離した。それに光希がほっとした瞬間、晃希は後ろに手を伸ばしてきた。 「やめろっ」 「何やってんだ!」  光希が言うのと同時に浴室の扉が開き、慶太の怒声が響いた。  慶太が晃希の体を光希から引き離してくれる。それに光希は、ようやく体の力を抜いた。 「落ち着け!」 「離せ!」  晃希が暴れるのを、無理矢理に慶太が引っ張っていく。 「毎日噛んでやる。毎日毎日、消えないように光希のうなじ、噛んでやる!」  晃希の声が響く。光希は体を起こすと、晃希の顔を見た。  また泣きそうな顔をしている。もうやめて欲しい。ただの怒りや侮蔑であれば光希も憎み嫌うことが出来るのに、晃希の顔はそうではない。 「だめだよ、晃希」  慶太が冷静な声で言う。 「晃希、光希は家族だ。馬鹿な事はやめろ」 「じゃあ兄さんは、光希がこの家を出て、糞野郎のところに行ってもいいのかよ」 「嫌だよ。でも、晃希のしていることはそれとは関係ない。ただ怒って、光希を思い通りにしたいだけだ」  慶太は晃希の体を無理矢理に抱き寄せると、その頭を撫でた。 「悪いね、光希。晃希は少し混乱してる。光希が帰って来ないことも心配してたし、食事を取らないことも凄く心配してた。疲れているんだろう。俺からきちんと話しをするから」  そう言って、慶太は浴室の扉を閉めると、晃希を連れて行った。         
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