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絆 6

「いたっ」  うなじに手をやると、そこからは血が出ていた。お互い発情していないので、いくら噛んでも番にはなれない。それは晃希も分かっていて、それでも噛んだのだ。  つい先ほど、家族の意味を分かった気がしたのに、それがまたすぐに崩れていく。一体晃希と自分は、家族なのかそうではないのか、光希には分からない。  ようやく近づけたと思ったのに、また離れてしまった。一番近いはずの晃希が、今は一番遠い。  一体何を間違えているのか、光希には分からなかった。いや、分かっていたが、本当のところは分からない。  光希はシャワーで血を流しながら、久我山に与えられた痛みを探していた。しかし、晃希の与えた痛みに混じり、もうそれを探し出すことは出来なかった。  風呂から上がり居間に行くと、そこには慶太がいるだけだった。 「晃希は」 「部屋で休んでる」 「そう」  慶太の隣に座ると、慶太が光希のうなじを覗き込んでくる。 「消毒、する?」 「ううん。ここに跡残したくないから湿潤治療したい。何か貼るやつあるかな」 「持ってきて貰うよ」  慶太が電話をすると、家政婦の橘が傷口に貼るパッドを持ってきてくれた。慶太がそれを受け取ると、光希のうなじに貼ってくれる。 「そうだ、兄さん。金属製の首輪、落ちてなかった? 三日前、多分ここで落としたんだけど」  それは久我山の首輪だ。恐らく高価なものなので、返さなくてはいけないと思うのと同時に、それを口実に会えるのではないかという打算もあった。  慶太は少し考えた後、答えた。 「あった気がするなぁ。片付けて貰っちゃったかな。あ、待って、橘さん」  橘が部屋から出て行こうとするのを、慶太が呼び止める。 「はい。何でしょうか」 「ここに、金属製の首輪、落ちてなかった? 三日前落としたと思うんだけど」 「はい。ございました。達臣様が取り合えず物置に保管しておくようにとおっしゃいましたので、物置に置いてありますよ」 「じゃあ、後で光希に渡してくれる」     
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