17 / 48

第17話

* 素生side * 「おっはよ~」 自室を出たら、ちょうど廊下を歩いて来た凌玖と会った。 朝から、何か機嫌良さげ。 「ねぇねぇ、昨日さぁ、要先輩とカフェ行ってさぁ、」 すんっげぇご機嫌じゃないですか? 言いたくて仕方ないって感じが出まくってますけど…? 「付き合う事になっちゃったぁ!」 「はあぁぁぁ!??」 いやいや、ちょっと待とうよ。 何だよ、この展開。 好きとも何とも言ってなかったじゃん。 ただちょっと楽しい感じでカフェ行っただけじゃんっ! 何急に付き合う事にしてんだよっ、しかも、要先輩だって相当なヤンキーだぞっ! こんな凌玖みたいなエンジェルが……あんなヤンキーに…… 「…って凌玖」 「ん?」 「やってないだろうなぁ」 「あ~うん、キスはしたけどね~」 どおぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!! 凌玖、お前、案外軽いのかっ!? まぁ、ガード硬そうなイメージは無いけど…。 朝から、気分を害された。 凌玖がヤンキーに持って行かれた…。 つらい…。 「要先輩ねっ、話面白いし優しいしケンカ強いしカッコいいしキスもうま、」 「あーーーーーっ!!!聞きたくない聞きたくない言うな言うなっ」 耳を塞いでもぎ取れるぐらいの勢いで首を振る。 凌玖と要先輩がキスだなんて……しかも朔弥先輩によると要先輩は「エロい」と…。 そんなん、今日にでもヤッちまうだろーーーーーーっ!!!!! どんよりした気分で学校へ向かう。 あぁ、何か、現実逃避したい。 「よっす」 後ろから肩を叩かれた。 振り返ると、めっちゃ笑顔で怜が立っていた。 「あー、よっす」 「ん?どした?」 曇天背負ってる様な俺の顔を覗き込む。 俺と真逆で晴天の様な奴……朝から、男前だなぁ、ほんと。 「はぁ…凌玖がヤンキーと…」 「は?」 あ、怜もヤンキーだったわ。 「2年の成瀬要先輩って分かる?」 「成瀬…あぁ、蓮見のツレの?」 「うんっ、俺ね、付き合う事になったんだぁ~」 ウキウキすんなっ。 「そうなの?じゃあファンクラブが相当ザワつくんじゃねぇ?」 ほんとだよ。 凌玖にはファンクラブがあるんだぞっ。 そいつらが黙ってる訳ねぇぞっ! 凌玖は男にしとくの勿体無いくらい可愛いからさ、そりゃ在校中に男に言い寄られる事もあるだろうなとは思ってたよ? なのに、それがこんな入学して早々、よりによって蓮見のツレと付き合うなんてさ…… 「落ち込んでんの?」 「そりゃ、落ち込むでしょ」 「じゃあ、俺が慰めてやるよ」 「退けろ、この手っ」 物凄い早業で俺の腰に回されて来た怜の手をバシッと叩く。 「痛っ、何だよ、良いじゃん、減るもんじゃ無し」 「減る減る」 文句言ってる怜を横目に、到着した下駄箱で靴を取り出していると…… 「あっ、要せんぱ~~い」 可愛らしい余所行きの声で凌玖が手を振ってる。 要先輩って事はだよ……かなりの高確率で……もれなく、アイツが付いて来るのでは…… 意地でもそっちを振り返らず靴を履き替える事に専念してた……が、…バン、と派手な音を立てて俺の顔の隣に思いっ切り手を付かれる。 すぐ後ろに……肉食獣の気配…。 ゆっくり振り返ると…… 「ひいぃっ!!」 すんげぇ至近距離で俺をロックオンしてる奴が居る。 しかもその目が……もう既に殺気立っている。 期待通りのアイツだ。 ど金髪のアイツ。 「よぉ」 「…よぉ」 同じ様に返して、静かに靴を履き、何気にそこを去ろうとしたけど……バンッと、反対側にも手を付かれる。 こ、これはもしや………二度目の壁ドンヤンキーバージョンではっ…。 「返事は」 「……は?」 「シカトか?」 「何の事……」 ………はっ!! もしやLINE!?何か入れて来てたっ!? 「………あ~……携帯、見る時間無かったかも、あはは」 「あはは、じゃねぇんだよ」 どうしよう…… 逃げないと…… 拉致られるか…… 殺される…… 「ぉりゃっ!」 「いっ、た!」 目は俺をロックオンしてるけど、足元は隙だらけだ。 そこで俺は思いっ切り……いや、ちょっとは手加減したけど……蓮見の脛を蹴ってみる事にした。 流石弁慶の泣き所。 肉食獣蓮見もそこは痛かったらしく、壁ドンが解けた瞬間に脱出成功っ! 「こらぁぁぁっ!!素生っ!!!」 「わあぁっ!」 思いの外早い立ち直りに逃げる事が出来ずに、思わずそこにいた怜の後ろに隠れた。 というか、怜を盾にして蓮見に向かって押し出した。 「怜っ、助けてっ」 蓮見はもう立ち上がってこっちに来てる。 「何だコイツ」 怜を見て蓮見が言う。 「あ、俺、素生の友達の日比谷怜っす」 「そうか、退け」 サラッと斬って俺を掴まえようとする。 「蓮見先輩、コイツの事狙ってんですか?」 怜が軽く聞くと、あきらかに2割増しくらい蓮見の機嫌が悪くなる。 「だったら何だ」 「だったら、ライバルっすね」 「あ?」 「俺も狙ってるんで」 宣戦布告かよーーーーーっ!!!!! このタイミングでかよーーーーーっ!!!!! 蓮見の殺人的な視線が俺から怜に完全に移った。 あれ? これは逃げられるチャンスでは? この2人が俺を取り合ってケンカした所で、俺には何も関係はない。 2人が勝手にやった事だ。 「そいつは俺のもんだ」 「え、付き合って無いですよね」 「うるせぇ、退け」 「嫌がってますけど」 おおぉ~~~、怜、強いじゃんっ。 こんなヤクザみたいなヤンキー相手に顔色1つ変えないなんて……ちょっと見直したーっ。 うん、よし、逃げよう。 一触即発の2人からそっと離れて、その場を去ろうとしたけど…… 「あれ、素生どこ行くの?」 凌玖め…… 天然かっ! 「素生」 健闘虚しく腕を掴まれる。 「昼休み、屋上に来い。1人でだ」 ………呼び出し食らったよ…… 俺……屋上から落とされるのかな…… くそうーーーっ、こんな事ならLINE見とけば良かったっ!!! 「逃げんなよ」 肉食獣の眼力に思わずゴクリと唾を飲み込んだ。 蓮見は俺の腕を掴んでいた手を離すと、怜に一瞥をくれる。 「コイツに手ぇ出したら殺す」 威嚇が怖すぎっ!!! 俺絡みで殺人とかマジ勘弁っ!! 「先輩、また後でねっ」 ご機嫌な凌玖の声が殺伐とした玄関ホールに響く。 常夏位熱々な凌玖と、身震いするくらい超絶冷風吹き荒れてる俺との温度差が酷い。 教室行こう。 ちょっと落ち着きたい。 朝から、ヤンキーに絡まれて疲れた…。 「も~~要先輩朝からカッコいい~」とかほざいてる凌玖をほっといて、先にサッサと歩いて行く。 「なぁ、」 怜が隣にやって来る。 「アイツに携帯教えてんの?」 「脅されたんだっ、無理矢理だっ」 完全に脅迫された。 「俺も」 「ん?」 「俺にも番号教えろよ」 「え…」 ……どうしてこう、ヤンキーは上から目線なのか。 お願しますの一言でもあれば、まだ可愛いもんだけど…… 「蓮見には教えて俺に教えねぇって事はねぇよな、素生」 これも軽い脅迫ではないでしょうか。 「教えられねぇなら納得出来る理由を今聞かせろ。それが出来ねぇなら今直ぐ教えろ」 それは結局、教えろ、と言う事で良いのかな。 ……何か……激しく蓮見と同じ匂いがすんだけど…。 ものすごく重い動作で怜と携帯番号を交換した。

ともだちとシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

存在しない君は誰だ?
1話 / 355文字 / 0
1/5 更新
【わんこ系×強気】幼い頃に交わした約束。でも、ノンケのお前との約束を今の俺には果たすことが出来ない。
1
12話 / 11,367文字 / 0
7/15 更新
モテモテ癒し系脳内クズドS×あくまで平穏を望む平凡クン
8話 / 4,559文字 / 0
8/26 更新
夏休みの国の子供の続編。大学生×かつて不思議なものが見えた高校生+その弟。
4話 / 7,506文字 / 0
7/30 更新
連載中
ゴミ箱
ゴミ箱は捨てる場所。
6話 / 4,602文字 / 0
9/1 更新