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第11話 一緒に寝たい2

 真顔で「一緒に寝たい」とか言われて、一瞬何も考えられなくなって、何の答えも出せずに数十秒もやつと視線を合わせるだけだった。やつの真顔に対して負けないぐらい結構険しい顔をしていたと思う。 ただ帰るのが面倒くさいから泊って行きたいっていう意味なのか、そじゃないと別の意味で言っているのか、それでもないとまた私をからかう為に何かを仕掛けているのか、こんな変なタイミングでこんな話をしだす意図が到底分からない。  「…こんな反応するとは思わなかったな。」  「何が?」  「『今のは却下だ』とか、『ふざけるな』とか言わないの。」  「え?…だって、お前がどんな意味で言ったのか全く分からないから。」  「どんな意味って…。」 まだぼっとしてる顔で目を合わせている私にやつはあっけないって顔で軽く笑っていた。その後はなぜか眉間を微妙にしかめてからどっか気に喰わないって雰囲気を出している。  「あんた、俺がただ泊まるだけの意味で言ったとでも思ってんの?」  「…思ってたけど?」    「俺があんたのこと好きってこと自覚してる?別に、俺の気持ちまで分かってくれとは言わない。少なくとも、俺はあんたのことが好きってことは自覚して欲しい。」  「何を自覚しろっていうんだよ。」  「なにげなく俺に優しくしたり、触れたりするけど、俺はもう我慢の限界なんだよ。1日何度も何度も勃つ。」  「立つ?何が?」  「...…本当に分かんねぇの?じゃねぇとそんな振りしてるだけ?、たまにそんな反応される時すっげー腹たつんだけど。」  「はぁ?」  最後に舌打ちまでしやがる。腹たつのはこっちなんだよ。今のはなんなんだよ。完全に喧嘩腰じゃねぇか。  私が普通にこいつと会話して、一緒に笑いながらご飯食べてたりするから平気だと思ってるかもしれないけど、一応まだ熱も完全に下がってなくてじわじわするし、身体もだるい。こんな状況で面倒くさい口喧嘩とかしたくなかったから慎重に考えてただけなのに何でバカにされなきゃいけねぇんだよ。     「…んっだから!あんたのことで股間が勃つんだよ!!」  がっと怒り出したやつはいきなり静かに口を閉じて他のところをずっと見つめている。  …まぁ、私も佐野さんに向けて同じ感情を抱いていたから、分からない事でもないけど…。未だにやつが自分の気持ちに自覚して欲しいっていう言葉の意味が理解でしない。それを自覚して何をしろっていうんだ。自分の身体がそうなったのはこっちの責任だから責任でも取れって話か?いつもやつに対して怒った記憶しかないのにいつ私が自分に優しくしたりしたっていうんだよ。いつも怒ったりイライラしてるだろうが?!触れたっていつ?火傷した時のあれ?別にそんな意味を持って変なとこ触れた訳でもないだろ?そんな問題じゃなくてもう身体に触れること自体がいやだから触るなってことか?無神経だったかもしれないけど、そんなことまで考えてあげる筋合いはない。    「あのさ、あんたって立ち?猫?」  今度もやつはこの会話で私に対する配慮はなかった。いつもいきなり話がぶっ飛びすぎたりして会話についていけない時が多かったけど、今回だけは一発で理解してしまった。…はぁ。  「お前どこでそんなの覚えて来た。」  「あんたが教えてくれないから自分で調べた。達どか、ネットとか。後、佐奈江。」  「佐奈江?って誰れ。」  「あ、名前言ってなかったっけ。泉佐奈江。俺の姉貴。」  「…お前正気か?」  こんな正気じゃないことを自分の姉に言ったと?姉と親しくないって言ったのは自分だろ?親しくもない人に、それも自分の家族にどうやったらそんなの聞ける?  「あんたの話は出してない。ただ男とはどうやるのかが気になっただけだから。」  「… …」    「アメリカで長く住んでるからそんなのにもっと詳しいんじゃないかなと思って。聞いたら結構詳しく教えてくれた。一応男とも女とやるのと似てるようなもんはできるってこと分かった。ゴムちゃんとつけてやるんだぞーっとも言われた。」  別にアメリカと全く関係ないだろう?たまに本当に私の頭ではやつの行動が理解できない時がある。…あぁ、もうー、泣きたい。  呆れたまま、もう何も話ししたくない気持ちになっている私を知ってるか知らないかやつはしゃべり続けた。  「ね、どっち?」  「そんなん言うわけねーだろ!」  「…言いたくなかったら別にいい。…あんたがどっちだろうが、俺は関係ないから。あんたは経験あるだろうし、そっちに合わせる。」  やつの中で私はいったいどんな人間なんだろ。もうすでにそんな経験ぐらいはいくらでもあるいやらしいスケベに見えてるのかな。私のことで勃つってことは、私で何か想像しているってことだよな?いったい私で何の妄想してんだ、こいつ。  「バカなこと言ってんじゃねぇよ。」  前からやつにずっと経験がある程でこんなの言われてるけど、そんな経験なんかない。誰かとまともに身体を重ねた事なんかない。佐野さん以外の人と肉体だけの関係を求めた事もない。佐野さんともお互い触って口でやっただけで挿れてはない。なぜか流れで挿れられる直前まで行ったけど、その時ゴムなんかなかったし。だから結果的には男とも女ともやったことがない。なのに自分がどっちなのか分かるわけねぇだろ?  「俺、どうしたらあんたをその気にさせられる?…あの男みたいにまた胸ぐら掴んでキスでもしたらいいのか?」  「私をその気にさせたら何?そうしたらお前と寝るとでも思ってんのか?」  なんか勘違いしてんじゃねぇ?男が好きって言っても誰ともやれるってわけじゃねぇんだよ。  「そう。あんた、あの男ともそうだっただろ。あの男に告るとか、自分から近づく気はなかったくせに、あの男に触られて感じてただろ。」  「… …」  「あの男と結局寝ただろ。その後ラブホの方向に行くの見てたから。」  「あぁ…、そこまでついて来たのかよお前。」  こいつが頭がいいのは認める。物事を考えることも他のガキとは確かに違う。でも、やっぱ人間関係ってなるとおかしいぐらい貧弱すぎる。欲しいものを手に入れたいのに、どうすればいいか方法が全く分かってない様子だ。子供の時から自分がされていた見慣れた方法で相手を攫おうとするだけにしか見えない。こんなことしたら相手は逃げたがるだけだろうに。私はやつに慣れてるから別に悪意があるとかじゃないってことは見抜いたりするけど、これで彼女とか作れるのか。いや、その前にこいつの周りの人間関係ってどうなってんの?  「今までよくも黙ってたな。それ、バラしたら一発で私なんか社会から抹殺だ。で、また脅しか?」  「そんなつもりはない。俺はただあんたが欲しいだけだ。」  自分では否定しているが、最悪やつはこんな悪い癖に自覚がないかもしれない。やつにそんな気がなかったとしても、私にはガキがその事実を知っていることだけでもう相手に自分の命を渡した気分だ。…やつの前でどんな顔でいればいいか分からない。  「あの男はそれであんたを捉えただろ。俺も、あんたが望むことなら何でもやる。」   …何でもやる…って。あんなこと軽く言うなんてあいつ自分の身体何だと思ってんだよ。まだガキのくせに人の身体を見下すことはいったい誰に教わった。  「何ができる?」  「… …」  「言ってみろ、お前に何ができるんだ。」  やつと話をしていれば非常に理性的で論理的に言う時もあれば、感情が絡まったら一気にわがままのガキに変わる時もある。ギャップがすごくて今まではやつがそんな振りをしているだけだと思っていたのに、これは多分計算的とかわざとらしいものじゃない。…昔からのやつの性格だ。  「…やったことはないけど、…フェラとか、あんたがやりたいっていうことなら何でも。……俺の中に挿れられるのがあんただったら我慢する。」  必死に噛みつこうとする奴の会話にまたイラついてしまった。少しでも近づきたくて、必死な気持ちで言ってるのは分かるけどこれは違う。しかもこいつの姉は何を思ってこんなことやつに教えたのか意図が分からない。天才ってみんなこんな感じか?  「あんたは俺のことでエッチなこと考えたことないの。」  「あるわけないに決まってる!」  さっきから我慢できないぐらい頭痛が酷くなっていく。早くこいつ帰らせて休みたい。  私のことや他人のことには厳しいぐらい理性的に考えて話しだすくせに、何で自分のことになったらこんなにも下手くそなんだ?  「……お前、今自分が何言ってるか分かってんの?自分に何の感情もないやつと寝てどうすんだよ。本当にこれで大丈夫だと思ってんのか?」  「…それでも価値はあると思ってる。」    「…てかさ、お前のこと男っていうか、まだガキにしか見えないよ。こっちはそんな趣味ないんだけど。」  あぁ…。めっちゃ傷ついた顔してる。正しいことやってるのに何で罪悪感なんか感じなきゃいけねえんだよ。  「お前がやろうとすることには何の価値もない。残ることもない。お前が望む結果にはならない。」  反撃しなきゃいけないタイミングにかかってこないのがもっとハラハラする。くっそー。表ではいつも強気のくせに中身はデリケートだから扱いにくいんだよ、こいつ。  「俺、…いつまであんたにガキだと思われるんだろ。こんな関係が続いたら、結局俺はあんたにとってずっと他の奴らと同じ生徒とかガキにしか見てくれないはずだ。時間が経てば経つほど、この関係になれてしまってそれ以上にはなれないはずだ。教えてよ、どうすればいい、この気持ち、どこに向かったらいい?」  床を向いていたやつの視線が私のかをに当たった。唇を軽く噛んでから俺に訴えている。  「あんたも、今こんなに苦しのか?頭がおかしくなるまで考えてるのに、答えなんか出ない。こんな重くて息苦しいこと、どうやって10年も平気に我慢できた?どうやって耐えてきた?…もう充分いいだろう?こんなのやめてよ。あの男のこと諦めろよ。」  やつの話は、私がやつにしたい話だった。こんな意味のないことに時間使うなって。誰かを好きになったことは後悔しない。だけど、好きだった分だけ自分が酷い目に会う。全てを自分一人で耐えなきゃいけない。誰一人自分の気持ちを理解してくれる人なんかいない。助けなんか求められない。片付けられない自分の感情の中で、その気持ちが鈍くなるまで我慢するしかない。だから、もっと息苦しくなる前にここで、今のこの距離でその心を止めて欲しい。お前が近づくほど、お前から離れないといけなくなる。近づけようとするたびに、もっと息苦しくなるのはお前だ。  「…もう少しは他のこと考えてもいいだろ?少しは自分のこと考えてもいいだろ?」  そんこと言われてもそう簡単にできないこってことはやつも知っているはずだ。10年間続いているこの想いは私にとって空気や癖みたいなもんで、自然に思いだしたり、浮かんできたりする。あの人と関わるだけ関わってきた人生だから、切る時もこんなに苦労する。自分でその関係を終わらせた癖に、そんなんこと言わなかったら良かったって後悔なんかしてる。自分にあんな酷い切り方させた人を嫌いになるどころか、…すぐにでも会いたいって思ってしまう。だから、いつも同じ場所を迷うばかり。…いつになったら、消えるのだろう、この気持ちは。…私も分からない。最初から行く場所なんかない気持ちを、どうすればいいかなんか。  「あんたのこと大事にしたい。大事にするってあんたと約束もした。…無理やりはしたくないのに。あんたが嫌いなことやりたくないのに…。俺、もう自分のこと勝手に止められない。」  私と一緒だ。可哀想…。  佐野さんのこと考えながら一人でしたりしたらその最後はいつも男のことで絶頂に達した自分のことを経滅してた。あの男にぐちゃぐちゃにされながら嬉しがってる妄想なんかした汚らわしい自分が嫌いで死にたくなるだけだった。佐野さんの顔、どんどん平気で見れなくなるだけだった。妄想の中ではこんなに優しく自分のこと抱いてくれたのに、現実では手すら繋げられない。惨めな現実にもっと絶望するだけ。やつも私と同じこと、感じてるのかな。  「…俺と寝るとかの話はもういい。あんたはただベットに横になってるだけでいい。あんたには何もしないから、少しだけでいい。今日が終わるまであんたのこと俺に見せて。教えて。」  「…どういう意味、や、何するつもりだ。」 私の質問にやつは何の答えも返してくれなかった。ただしばらく自分の手を見下ろしながら唇を噛んで何か悔しそうな顔をしている。    「……本当それだけでいいから…。……お願い…。」     継続

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