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課長とお買い物2

「これで……いいのかな……?」 しばらくすると、優さんのおずおずとした声がカーテンの奥から聞こえた。 「あ、終わりました?」 俺が勢いよくカーテンを開くと、着替えた優さんの姿が現れた。 「……っ」 その姿を目にした俺は、言葉を失った。 優さんのすらりと伸びた脚に裾の長さの足りた細身のパンツが吸いつくように着こなされていた。ニットの渋い赤は優さんの綺麗な顔をより映えさせている。 試着室に入る前とはまるで別人のような優さんに、傍にいた店員が唾液を飲み下す音が聞こえた。 「笹川君……?」 固まってしまった俺の顔を心配そうに覗き込んできた優さんに、俺はハッと我に返る。 そして、優さんの目の前でシャッと素早くカーテンを閉め切った。 「なに? どうしたの、笹川君!?」 「すんません、優さん! 俺、急用思い出したんで、今すぐそれ、着替えてください!」 「え、そうなのか? わかった」 カーテンの内側から慌てた優さんの声が聞こえてくる。 店員はまだぼんやりと、その視線を閉じられたカーテンに注いでいた。 俺はイライラとしながら、店員から優さんを覆い隠すように試着室の前に立ちはだかった。 ……やっぱり、優さんの私服は今のままにしておこう。それどころか、スーツもダサいやつに買い替えた方がいいのかも知れない……。 俺は真剣にそんなことを考えながら、俺だけが知る愛しい優さんを、今すぐ抱き締めたくて仕方がなかった。   ***終わり これにて完結です。 最後までお読みくださり、ありがとうございました!

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