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ポッキーの日

「ん」 ユズルが俺にポッキーの箱を差し出した。 「はい?」 「やるよ。今日はポッキーの日だろ」 「はぁ、有難う御座います」 くれるというのなら有り難く頂いておこうと思い、両手で恭しく受け取った。 「まぁ、ユズルったらそれで滝川ちゃんとちょっとエッチな遊びするのね」 「何だよ、それ」 「あれでしょ?ポッキーの両端からお互いに食べ始めて最後にはチューするやつ」 「そうそう。シンプルだけど良い遊びよね」 「しないし」 「でも滝川さんなら絶対に断りませんよ?あの人普通の人とは何か締めてるネジが違いますもんね」 「マロ〜」 ユズルが笑いながら俺の頭をくしゃくしゃに撫で、ディディ先生が楽し気な笑い声を上げた。 こういう時、とても暖かな気持ちになる。 「そう言えばマロンちゃんは恋人居ないの?」 「居ませんよ」 「セフレは?」 「居ません」 「そうなの?可愛いのに勿体無いわね。何ならあたしがセフレになってあげようか?」 「大丈夫でーす」 「俺は無理だぞ?」 「望んでませーん」 「お前、誰を振ってんのか分かってんのか?」 またユズルが笑いながら俺の頭をくしゃくしゃに撫でる。 ディディ先生も笑って、俺も笑った。 練習室で後片付けをしていると、水野さんが顔を覗かせた。 「それ終わったら今日はもう帰っても良いからな」 「はい。あ、水野さん」 「ん?」 おいでおいでと手を招くと、水野さんは練習室の中に入って来た。 「どうした?」 「水野さん、ポッキー好きですか?」 「え?ポッキー?まぁ、好きだけど」 「ユズル様がくれたんで食べませんか?」 パッケージを開けて一本取り出し、口に咥える。 少し顎を上げると水野さんが笑った。 そして、水野さんは俺が咥えているのとは反対側からポッキーを食べ始めた。 水野さんの唇が少しずつ近付いて来る。 その唇を見詰めていた目線を上げると、水野さんも俺を見ていて。 束の間見詰め合い、さっきよりももっとゆっくり近付いて来る水野さんの唇に合わせてゆっくりと目を閉じて行く。 そして、目を閉じる直前・・・ポッキーがパキンと折れた。 目を開けて水野さんと至近距離で見詰め合う。 「折れちゃいましたね」 「そうだな」 俺が笑うと、水野さんも笑った。 離れようとした水野さんの両頬を掴み、唇の端を少し舐める。 「チョコの欠片付いてましたよ」 俺を見詰める水野さんに笑い掛け、両手を離した。 離れようとした時、今度は水野さんが俺の頰を両手で掴んだ。 束の間見詰め合い、そっと目を閉じる。 一瞬後に交わしたキスは、甘くて少し苦いチョコレートの味がした。 -FIN-

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