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第84話

返答のない二人に耐え兼ね、僕は隣の先輩に意見を求めることにした。 「あー……えっと、他の二人にも最後に挨拶してからの方がいいですかね?」 「別にいいんじゃない?あぁ、でも二人を待つ間にキスの一つでも出来たら楽しいだろうな。ねぇ窪塚、キス……してもいいか?」 「はぁ……!?い、いや馬鹿な事言わないで下さいよ、さっき痛い目見たばっかでしょ……!!」 「……ダメ?」 「だっ……!!!」 こてんと首を傾げた先輩は、何というか……もの凄くあざとい。 本当にこの短時間で気が触れるくらいのストレスを感じたのだろうか、と心配になるくらいにはちょっとこの人の頭はおかしい。 ダメだと言って突っぱねる事が最善だと分かっているのだけれど……何故だろう、身体が動かない。 ドクドクと心臓がやけに煩い。 先輩の顔がいつも以上に凄く綺麗に見えて、僕はあまりの眩しさに俯いた。 「……ね、顔めちゃくちゃ真っ赤だよ?」 「う、うるさい……離して下さ、」 「やだ。こっち見てよ」 顎に添えられた手が僕の顔を上へ向かせると、彼の夕焼け色の瞳と目が合った。 …………あれ? 「……うわっ!!え、先輩じゃない……なんで!?ていうかアンタ誰!?」 「あー残念、バレちゃったかー。第一世界の安城夏樹だよーって、おっとと……酷い事するなー」 その言葉を聞いた瞬間、僕は渾身の力を振り絞ってその胸を突き飛ばした。 しかし、離れてみればみるほど、彼は僕の良く知る第三世界の安城夏樹の姿をしている。 爽やかな笑顔や雰囲気は第一世界の先輩そのものだけれど、ここまでそっくりだと判断するのは本当に厳しいかもしれない。 「あともう少しでキスまではイケそうだったのに残念だ……」 「残念がらないで下さい……!!」 悪質な詐欺に引っかかりかけた僕は、彼と距離を取るように僕が二人集まっている後ろに身を隠した。 「ちょっ、それは卑怯でしょ……!! その行動に第一世界の先輩が低い唸り声を上げた。どうやら効果は抜群だ! ここは一番安全地帯かもしれない。

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