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蛙の子は蛙

 桃太郎は毎晩、養父母の争いを見ていた。アルファ同士ではどうしたって互いが互いを孕ませたくて仕方がない。しかし毎回丈士が勝利し万里を組み敷いていたのは偏に先手必勝である。いかに相手を気持ちよくさせるかにかかっている。丈士はその点、巧みだった。長年の付き合いもあって万里の弱点を網羅していた丈士は取っ組み合いの最中でも万里の身体の弱いところつまりは性感帯を刺激していたのである。  桃太郎もまた口づけや口淫の最中、魁の身体に軽く触れながら彼の弱点を探っていた。大きく張った胸板に指を這わせると魁は鼻を鳴らした。硬く引き締まった尻もまた足との付け根をなぞると、さらに引き締まった。直接的な刺激だけでなく、要所要所で魁の官能を高めていたのである。  魁は、こちらに来てから童貞を失い、相手は発情したオメガである。何もしなくても彼らが勝手に挿入していたため、あまり前戯をしていなかった。それに加えて、桃太郎のフェロモンである。鼻が効かない魁ですら、その匂いに少しずつ侵食されていた。 「おい、これ、はずせよっ!」 「いやいや絶対殴られるの分かってて外す馬鹿はいないだろ? 大丈夫、大丈夫。俺たくさん練習したから絶対気持ちよくなれるって」 「は? どういうことだよ?」  まだ状況が把握出来てない魁の足首を掴むと桃太郎はその足を高く掲げた。立派な太腿筋がピンと張る。重さはあるが桃太郎はその足を肩に乗せると魁の中心に舌を寄せた。  先程の口淫を思い出した魁のペニスがびくんとなるのを桃太郎は素通りして真っ先にその奥にあるアナルに口づけた。 「ひっ!!!」  はじめて触れられたせいで魁は思わず悲鳴を上げ、桃太郎の背中付けていた足先を丸めた。 「ちゃんとたっぷり解してあげるから、ね?」 「い、いらね……ぇっ、うおっ、ぬるぬるして、キモチワりぃっ! やめ、ろっ!」  桃太郎の背中をかかとで蹴りつつ身を捩るも桃太郎はびくともしなかった。「鬼の魁」と呼ばれるくらいには現世でそれなりに喧嘩をしてきた魁の攻撃を受け止める男ははじめてだった。魁はアナルへの刺激だけでなく、そのことにも恐怖を感じた。産まれてはじめて、自分より強いかもしれない男に出逢ってしまったのである。怯んでしまった魁の身体を桃太郎は丁寧に苛んだ。舌で唾液を送り、それを指でなすりつけ、縁を拡げていく。もう片方の手は反対から回して魁の萎えたペニスをゆるゆると扱いた。一度に二箇所を同時に責めて、魁の快楽を揺り動かした。ゆっくり、丁寧に、慎重に。 「ほら、少しずつだけど柔らかくなってきてる……。素質あるんだね」 「ちげぇ、そん、もんねぇからっ。マジやめろって!」  与えられ続ける刺激と、逃げようとして暴れた分、魁の体力は奪われた。口では嫌がっていたがその足は桃太郎にしがみつくようにして巻き付いていた。そうでもしないと腰から崩れ落ちそうだったのである。  桃太郎の指が三本、ずっぽりと魁の中に収まってしまうとその憎まれ口すら弱々しくなっていた。 「も、やめろっ……はぁはぁ、なぁ、やめて、くれっ。これ以上されたら……っ♡」 「ここ、いいんだ?」 「よ、くなっい、……っ♡ よくないからっ、やめ、ろっ、ダメっ! そこ、ぜったい、ダメっっっっっ♡」  桃太郎は前立腺を指で刺激し、握ったペニスの先端を親指でひっかき、根本をキツく吸い上げた。様々な異なる刺激を一度に与えられ、魁は背を反らせ、絶頂した。どこが、どう気持ちよくてイッたのかもわからない。とにかくどこもかしこも気持ちが良かった。自分の精液が腹にこぼれ落ちていくのを虚ろな目で見ている魁のアナルに熱いものが触れた。 「む、むり。それ、はぜったい、むりだからっ」 「大丈夫、大丈夫。ほら、先端は挿ったから、後はちょっと頑張ればイケるイケる」 「っざけ、んなよっ! なんで、俺がっ!」  魁が下からにらみつけると桃太郎が一瞬止まった。魁の目に憂いを帯びた悲しい顔をした桃太郎が見えて、魁はどきりとした。これまでずっと好青年らしい爽やかな笑みをたたえていた桃太郎の初めて見る表情だった。 「運命、なんだ。お前は獣人以外の人間を見たことがあるか? ないだろう? 俺とお前だけなんだよ……。だから、俺たちはこの世で二人きりの、人間。運命の番なんだ」  桃太郎は集落で疎外感を感じていた。この旅でもずっと。それは自分以外の”人間”を一度たりとも見たことがなかったからだ。身体能力や頭脳で劣ることもない、けれどやはり彼ら獣人と自分とはなにか決定的に違うと感じていた。酒池肉林を繰り広げたとしてもそれは変わらなかったと、魁に、運命の番に出会った今ならわかる。求めていたのは同じ”人間”であることを。  桃太郎の言葉を聞いて、魁もまた自身の孤独を思い出した。喧嘩に明け暮れた日々は楽しかったがただそれだけだった。なろう系チートの小説にハマったのもここではないどこかに自分の居場所があるのではないかと夢想したからだ。手応えのない喧嘩相手に孤独感は一層増した。気付けば魁の身体から力が抜けていた。桃太郎はそれを見逃さなかった。 「あぁぁぁっぁぁぁぁっ! いってぇっ!」 「悪い、我慢出来なかった」 「軽、く、謝るんじゃねぇっ、くそっ! マジで挿れやがったっ! 抜けっ! 早くっ!」  あの大きな桃太郎のペニスが一気に押し込まれたのである、魁は絶叫した。指で解したとはいえ未開のそこは桃太郎にもまた痛みを伴う刺激を与えた。 「少し、緩めて。じゃないと抜くことも出来ない」 「ゆる、めるって……」 「じゃあ深呼吸して」  この痛みから逃れられるなら、そう思って魁は深呼吸をした。じんじんとする痛みで中の桃太郎を意識せざるを得ない。何度かゆっくり息を吸っては吐き、吸っては吐きと繰り返すと少しだが緩んだ。 「これなら動けそうだ」 「じゃ、あ、早く、抜けっ」 「はいはい」  桃太郎はゆっくりと引き抜こうと腰を動かした。魁はそのことに安堵してはぁと大きく息を吐くと、ぞわりとした何かが背中を駆け上がった。 「あっ、はっ……っ♡」  桃太郎はペニスを抜く瞬間、その先端で前立腺をこすったのである。もちろんわざと。その刺激に思わず魁は中を収縮させた。 「抜こうとしてるのに、こんなに締め付けたら、抜けないなっ」 「あぁぁぁぁぁっ! おま、え、またっ! あっあっああっ♡ ばか、やめ、っ♡ ああ、そこっ♡ うそ、だっ! やっ♡」  桃太郎は魁の中にまた押し込み、身体を揺さぶった。さっきは痛いだけのそこが、今度はそれだけではないことに気付いた魁が大きく喘いだ。深呼吸のせいですっかり馴染んでしまっていたのだ。自身の体の変化に魁は戸惑った。萎えていたはずのペニスがべちべちと腹を叩き硬さを増した。 「いやだっ、もうっ、無理っ! だめ、だって♡ そこ、そんなにしたら、俺っ♡」 「だめ? いいの間違いだろ? こんなに気持ちよさそうに涎垂らして、悦んでるくせにっ! あぁっ、孕ませたいっ!」 「孕む、わけないっ! ああっくそっ! だめ、だっ♡ イクっ♡」  魁を穿ちながら同じ拍子でペニスを扱くと、悪態を付きながらも魁は絶頂した。その締め付けはこれまでの交尾でも感じたことのないほどのもので、桃太郎もまた魁の中にたっぷりと白濁を注いだ。 「拙い。全然萎えそうにない……」 「おい、まて。嘘だろ? まだやんのか? いや、一回抜いて……って違う、もう無理だから、やめ、ろっ! あっ♡ 馬鹿、鬼っ! あっ♡ ああっ♡ また、っ、なんかくるっ、うそうそ、やだ、まじ、ほんとにっ! だめ、っ♡ ああああああっ♡」  無駄に体力があるせいで気絶することもなく桃太郎を受け入れざるを得ない魁は、おかげでこの後朝まですっかりずっぽりハメられまくるのだった。 🍑🍑🍑🍑🍑  すっかり桃太郎にハメられてしまった魁が深い眠りについている頃、桃太郎は犬、猿、雉の三人組に呼ばれた。 「桃ちゃん、何してたのっ!」 「鬼退治?」 「退治っていうのか、あれ……」 「まぁ彼のフェロモンが大分収まったのでオメガたちも目が覚めたみたいですし」  桃太郎との交尾によってどうやら魁のフェロモンが薄まったらしい。館に残っていたオメガたちはすっかり魁のフェロモンから解放されていた。その中にはもちろん、犬斗の母親である洋右もいたが彼は事情が少し異なるようだ。 「ママっ! 無事で良かった!」 「あれ? 犬斗? どうしてここに?」 「ママがいなくなったから桃ちゃんと探しに来たんだよっ! うわぁん、ママぁぁぁぁっ」  泣きじゃくり抱きつく犬斗を抱えた洋右が桃太郎に何事かと問い、桃太郎が事情を説明すると洋右の耳がピンと立った。 「聖斗にちゃんと言ったはずなんだけどなぁ……。潜入調査だって……まったく」  洋右はシェパードの獣人である。オメガできれいな体躯をしているが、訓練された肉体と精神の持ち主で、今回のオメガ失踪事件を調べるためにこの鬼ヶ島に自ら赴いたのだった。夫である聖斗はすっかりそのことを忘れてただけである。まったくもって人騒がせな犬夫婦だった。 「どうやら桃太郎のおかげでことは収まりそうだね。これから彼をどうする?」  さて、どうしようかと桃太郎は考えたが答えは一つしかなかった。 🍑🍑🍑🍑🍑  その家は喧嘩の耐えない家だった。今日もまた男の怒声が聞こえた。 「お前ほんとふざけんなっ! 今日こそ俺がお前をっ!」 「ばかだなぁ……。魁に俺がやられるわけないだろ? いい加減諦めなよ」  男二人の取っ組み合いは館を揺らすほどの勢いだった。  あの後桃太郎は島に残った。養父母へは手紙をしたためた。曰く、運命の番に出逢ったので帰りません、と。旅の仲間と洋右が唖然とする中、断固としてこの島を離れないと腰を据えた桃太郎を説得したが、桃太郎は一度も首を縦に振らなかった。ひとまず手紙を届けに養父母である丈士と万里のあばら家へ行くと二人は大爆笑した。 『さすが俺の子。アルファを番にするのか』 『蛙の子は蛙って言うからなぁ』  アルファの男を番に持つ彼らなら分かってくれると信じた桃太郎の気持ちはしっかり伝わったようである。少々早くはあるが息子の独り立ちを大いに喜んだ。 「だいたい、なんで俺が鬼で桃太郎に退治なんてされなきゃなんねぇんだよ……俺tueeeのチートのはずじゃなかったのかよ……っ」 「相変わらず魁はなぞの言葉を使うけどさ、魁の言ってる桃太郎の話が本当なら、俺のほうがそのちーとってやつなじゃない?」 「……じゃあなんで俺は異世界トリップなんて」  取っ組み合いの喧嘩の最中、魁はふと自身の境遇を嘆いた。桃太郎との暮らしは不満がないわけじゃない。昔のような孤独感を味わう暇もないくらいに充実している。これまで負けたことのない喧嘩に連戦連敗を喫しているが、それがむしろ心地よかった。だからといってこの異世界トリップに納得したわけでもなかった。悶々とする中、桃太郎が魁の両頬を掴むとじっと見つめた。  まだ、この男を好きになったわけじゃない。ただ、この男だけが自分を満たしてくれるのだけは認めざるを得なかった。  魁がにらみつけると桃太郎はにこりと笑った。 「もちろん、俺に退治されるため、だろ」 「……なんだろう、退治って言葉が違う言葉に聞こえる……、ってお前いつの間にっ! ああっ♡ くそっ、今日は譲ってやる、けどっ、いつか、絶対、お前をっ! あっ♡ そこっ♡」  すっかり桃太郎の笑みに魅了されているのだがその自覚のない魁が諦めることはなかった。しかし、この喧嘩もまた桃太郎の全戦全勝である。 ――もちろん、俺に愛されるため、だろ  こうして桃太郎は世界で一番の宝物、運命の番を手に入れましたとさ。  めでたし、めでたし……?

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