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第27話 センパイ

『いやー、治って良かったね』 「休ませちゃってスミマセンでした」 『良いなァ。アタシもトムくんの看病したかったー』 『風邪引いたらギルドマスターが看病に来てくれるぞ!』 『そういや、俺も風邪気味で……』 『行かねーよ』  ふざける皆の声に、思わず笑う。ヨジャちゃんもセイさんも、おにぎりさんも、クロから聞いて心配してくれていたらしい。 『それで、熱に浮かされた少年の画像は?』 『ヨジャ。さすがに犯罪』 『ネタにされるぞー』 「ホント止めてって。まあ、一人暮らしで風邪って、心細いもんですね」 『ノラさんに感謝だなー』  本当に。一人じゃ、病院に行くのも辛かったし。  結局、三日ほど寝込んでしまった。バイトも休んでしまったし。  野上さんは、今まで一人でやってたのに、おれが居なくて大変になったと笑っていた。社交辞令だろうけど。 『じゃ、人数と店も決まりだね。あとは当日人数変動あると思うけど、これでいこう』 『りょうかーい』 『皆に逢えるの楽しみーっ』 『遠方ディステニーランド参加組はアタシが預かるねえ』  遠くは九州、広島から来る。土曜日にディステニーランド、日曜にオフ会参加になるようだ。おれはオフ会のみ参加だ。  何だかんだと、もうすぐオフ会なのだ。カレンダーを見ながら、少しだけ楽しみになってきた。    ◆   ◆   ◆  『喫茶 小鳥』のテーブル席に座って、工具箱を片手に作業をしていたおれに、野上さんが近づいてきた。 「何してんの?」 「あら、てっちゃん。今ねえ、南里くんにラジオ見て貰ってるのよ」 「すみません、勝手に」 「いや、良いけど。ラジオ?」  野上さんが興味深そうに、手元を覗く。常連の幸恵さんにラジオが壊れたと聞いて、修理を買って出たのだ。午後のこの時間は客が少ないので、ちょっと見せて貰うつもりが、作業を始めてしまったというわけだ。 「南里くんはこういうの好きだなー。家にもいっぱいあったもんな」 「散らかってるだけなんで、突っ込まないで下さいよ」  二人のやりとりに、幸恵さんがコロコロ笑う。 「てっちゃんは、機械音痴なのよねえ。後輩なんでしょ?」 「畑違いです。俺は情報学科。南里くんは電気ですから」 「え。野上さん、大学……。えっ?」 「あれ? 言ってなかったっけ?」 「聞いてないです……」  まさか先輩だったとは……。野上さんが大学生時代か……。多分、2000年問題とかあった時期かな。  そう言えばフェムト秒とか言ってたか。理系なんだな。前職もシステムエンジニアって言ってたし。  先輩かぁ。 「野上センパイ」 「ちょ、止めて。何かツボに入りそう」  野上さんは恥ずかしそうに頬を染めて、キッチンに引っ込んでしまった。 (なるほど。そういうのが好きと)  ベタなのが好きなんだな。うん。 「南里くんが来てくれて、良かったねえ」  しみじみと、幸恵さんが呟く。なんとなく、遠い目で、キッチンの方を見た。 「ずっと一人じゃ、心配だもの」 「……そうですね」  

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