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第6話

「それは、僕が姫木と仲良くなるのが悪いって聞こえますけど」 「姫は私のものだ」 「そうなのか姫木?」 天王寺がいつもの調子で言い放った台詞に、西園寺が俺の顔を覗き込んできた。俺はブンブンと首を振り否定する。 「俺はものじゃない。そんなことあるわけないだろう!」 俺は、俺の自身のものだ。天王寺のものじゃないと、完全否定をした。 「姫は私の恋人だ」 「違う!」 「何が違うというのだっ……、──貴様、離せ」 叫んだ天王寺が俺に掴みかかってきそうだったのを、西園寺が天王寺の腕を掴んで止めて守ってくれた。 「姫木が嫌がってんだろ」 「……なにを」 「無理やり手に入れようなんて、最低だな」 西園寺は冷めた口調で天王寺にそういうと、掴んだ腕を振り払うように離し、俺の肩をそっと抱えてきた。 「……西園寺?」 「大丈夫か、姫木。もう帰ろう」 俺を庇うように優しく背中を押して、西園寺は教室の出口へと俺を促す。 けれどすんなりと帰すはずのない天王寺は、背後から声を飛ばす。 「西園寺は危険だ。姫、今すぐにこちらに来るのだ」 「姫木の気を惹けないからって、僕を悪者にしないでほしいな」 「何を言う」 「あんたのせいで、姫木に友達ができないんじゃないのか」 西園寺は言いにくいことを声に出した。たしかに天王寺に会ってから、どことなく周りから距離感を感じてはいたが、本人目の前にして西園寺の言葉は容赦ない。 そうだよ、俺には同年齢の友達ができていない。 火月と水月は幼なじみだし、もしかして西園寺って、この学校での俺の始めての普通の友達。 なんだか染々と実感してきた俺は、西園寺がすごく頼もしく、いい人に見えてきていた頃、天王寺が水を差す。 「貴様のような友などいらぬ」 その言葉は俺の胸にナイフのように突き刺さった。嫉妬も大概にしろと。 天王寺のことは嫌いじゃない、変な奴で、ものすごい勘違い男で、俺の言葉なんか全然聞いてくれないけど、俺にはいつも優しい。 忙しいはずなのに、俺の勉強を見てくれたり、帰りを待っててくれたり、俺が声を掛ければすごく嬉しそうな顔をしてくれる。 だけど、友達はいらないなんて言うとは思わなかった。 「なんだよそれ……」 俺は俯いて低い声を出した。わずかに肩が震える。 「姫木?」 「なんでそんな酷いこと言うんだよッ!」 顔を上げた俺は、天王寺に向かって怒鳴り声をあげた。俺に友達なんかいらないなんて、どの口が言ったんだと。俺の中で何かが爆発した。

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