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第9話

────────── 天王寺を無視しつづけて2週間ほどが経過し、俺は西園寺と学生生活を満喫できていた。くだらない話をして盛り上がったり、学校帰りにゲームセンターへ行ったり、お茶したり、勉強も教えてもらった。天王寺といい西園寺もかなりの秀才だったのだ。 構内で時々天王寺と視線が合ったりもしたが、俺は完全無視を決め込んでいつもそっぽを向いてやった。俺が拒否の態度をとれば天王寺はそれ以上近づいても、視線を向けてくることもなかった。たぶん俺にはその時の天王寺の表情が見なくても分かっていた……、きっと悲しい顔をしてるだろうと、なぜかそう思ってはいたが、俺は西園寺を悪く言った天王寺を許すことなどできなかったんだ。 明日から三日連休、これであいつの顔を3日も見なくて済む、そう思ったら俺はほっとしていた。 授業が終わり、みんながそれぞれに帰っていく中、俺は西園寺にちょっと待っててと言われて一人教室で待ちぼうけをしていた。 火月は明日からサッカーの合宿があると早々帰宅、水月も誰かと約束があるからと帰っていった。 「遅いなぁ~、西園寺」 教室で待つように言われてから、30分ほどが経過していたが、戻ってくる気配がない。俺は椅子に腰かけたまま肘を机について、グランドで行われていた野球を興味なくただ眺めていた。 連休前だからか、校内に残っているものなどもうほとんどおらず、いつもの騒がしさとは打って変わってすごく静かだった。グランドの声もよく聞こえてくるほど静かな教室で、俺はただ何度も時計を見ながら待つ。 「ごめん姫木、待たせた」 走ってきたのか、西園寺は息を切らせて教室に飛び込んできた。 「遅いぞ」 「ちょっと頼まれごとしてて」 「頼まれごと?」 「大したことじゃないよ。それより、はいコレ」 そう言って西園寺は俺の頬に冷たい飲み物を押し当てる。それはカップに入った氷入りの炭酸飲料。 「待たせちゃったお詫び」 軽くウインクをした西園寺は、ドリンクを俺に手渡して向かいの席に座る。仕方なく俺はドリンクを受け取って、これで許してやると笑った。 「これ飲んだら帰るぞ」 「そうだな」 俺は冷たいドリンクを一気に飲み干して、一息つくと「サンキュー」と軽く礼を言って席を立った。だが、西園寺は座ったままグランドに視線を走らせていた。 「どうかしたか?」 「野球……」 呟くように言った西園寺に、俺もグランドに視線を向けた。もしかして野球に興味があるのかと、俺はグランドから視線を逸らして西園寺を見る。 「したいのか?」 「いや、なんか青春だなって思って」 ため息のような声で西園寺はボンヤリとグランドを見つめたまま頬杖をつく。それにつられて俺もまたグランドを見る。確かに大きな声を出して、必死にボールを追いかけて、泥まみれになって青春をかけるその姿は、憧れにも似ていた。 そんな光景を見ていた西園寺はゆっくりと席を立つと俺の隣に立った。 「帰るか……」 「ああ」 軽く肩を掴まれ、俺は西園寺に促さるように歩き出したけど、グラリと足元が歪んだ。 あれ? まっすぐ歩けない。俺はふわっとした感覚を感じて西園寺に寄りかかってしまった。 「姫木?」 「ごめん、なんかふわふわして……」 そこまで話した俺の意識はそこで途切れた。ガクッと崩れた俺の身体を西園寺が優しく支えた。 「ショータイムはこれからだよ、姫木」 一人囁いた西園寺は、俺の身体を浮かせ抱き上げるとそっと教室出て、校舎裏口へと向かった。

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