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第16話 淫らな爆弾

――きっと、無理を強いているんだろうな。 そう思うけれど、町田の中はとても気持ちいい。 入っただけで、脳髄まで痺れるような快感が沸き起こる。これは癖になりそうだ。盛った猿のようにがっついてしまうかもしれない。 町田の唇を貪る。躯の奥底から煮え立つ昂ぶりを抑えたかった。 けれど、深く唇を合わせれば、興奮は次から次へと噴出する。震えながらも懸命にキスに応えている町田を見つめた。 愉しませるなんて、意地らしいことを言う。 町田だって、抱かれるのは初めてなのに。 痛いだけでは終わらせたくない。お互いに感じなくては、抱き合ったことにはならない。 肌を密着させて息を吐いた。目を閉じて、頬を擦り合せた。こんなに苦しくさせたのだから、たくさんの快楽を与えてやりたい。 「あ、あさ、ひなくん……」 腕の中で、途切れ途切れの声がした。 「あまりにも、大きくて……びっくりした」 町田は笑った。汗で濡れた肌が艶やかに光っている。 耐えている顔もいい。匂い立つような色気を放っている。 ――これは、本当に慎重にやらなくては暴走してしまう。 唾を飲み込んでから話しかけた。 「もうちょっと、このままでいますか」 「ああ、頼む……」 言葉を交わさず、互いの顔を見つめた。 ふたりで書を書いたときも、抱く真似事をしたときも、間近で見つめ合った。けれど、こんな顔は見たことがない。 上気していて、少し怯えているようだった。これから何が始まるか不安なのだろう。 宥めるように、静かなキスを何度も唇に落とした。ふっと町田の躯から力が抜けていく。 同時に、朝比奈を包む町田の肉がやわらかくなっていく。 ――キスって効果あるのかな。 そう思ったので、何度もついばむようにくちづけをした。 「ん、ん……」 町田は、身を捩った。 「こうされるの、いやですか」 「いやではないけど、躯が、下が、変になる」 変になるって、悪い意味ではないのだろう。 現に唇をかさねる度に、町田の中は朝比奈に吸いつくように馴染んでいく。わかっているから、しつこくキスを繰り返した。 しかもわざとらしく音を立てる。やがて、もっといじめたくなったので、舌で町田の唇を舐めまくった。 「う、う、ん――」 悶えながら町田は首を振っている。 さっき朝比奈の乳首を弄ったときとは違って、初々しい表情を見せている。泣きじゃくる寸前の顔みたいでかわいい。 「町田さんの中、ひくひくしている。こうしてほしい?」 「ん――あ、ああ……」 ゆっくり抜いて、素早くひと突きした。 身をくねらせ、町田は喘いだ。朝比奈にしがみついて、大きく息を吐いて睨む。 「きみは……いじわるだな……本当に、初めてなのか」 目は潤み頬が赤くなっていて、全く怖くない。むしろ、もっとひどいことをしたくなる。 挿入してから間を空けたので、少し冷静さを取り戻した。嗜虐心が芽生え始める。 「はい、素人です。だから町田さんが教えてください。どうやって突けばいいんですか。こうですか、それとも、こう?」 「うう、待て……あ、ん」 「待てません、ん……。早くしないと、く、う、出ちゃいますから。町田さんのいいところを、探さないと」 乱暴に抜き差ししたいという気持ちと、傷つけてはだめだという気持ちが、心の中でせめぎ合う。 結果、不規則なリズムで腰を動かすことになってしまった。 中途半端だよなと思ったけれど、適度な焦らしがいいらしい。 町田の声が少しずつ熱を帯びてきた。 朝比奈が突き上げると喘ぎながら身悶える。顔を歪め、朝比奈の猛り狂ったような昂ぶりを銜え込んでいる。 「あ! ……ああ――」 いろいろと角度を変えて擦っていたら、町田が特に反応するところを見つけた。もっと貫けと言わんばかりに、締めつけてくる。 舌なめずりして、そこだけを執拗に攻めた。 「あ――ん……ああ」 幼い子供のように、町田は泣いて朝比奈を拒む。目を閉じて首を振る様が、よけい支配欲を刺激するのに。 朝比奈は笑みを浮かべながら、町田の中を汚していった。 夢中で尻を振っていたら粘りのある液体が混ざる音が聞こえた。 あふれた先走りで抽挿が楽になった。腿の筋肉を使って回すように腰を揺らせば、水音は更に大きくなる。 町田を犯していると実感した。 「ああ、すげえな、これ……」 ただ腰を振るだけの動きで、こんなに興奮できるとは思わなかった。これほど、強烈な刺激を味わったら中毒になってしまう。 体位やテクニックがいろいろあるのはわかっている。だが余裕がない。バカのひとつ覚えみたいに単純な抜き差ししかできない。 「うん――すごい、あ……あ」 揺さぶられながら、町田は頷いた。色白の躯が、血色のよい色へと変わっていた。 町田が、朝比奈のたくましい胴を引き寄せる。貪るように唇を合わせた。 何度も中を突かれ、町田の躯はシーツの上へずれていった。 朝比奈は町田の腰を抱え直した。 力が入らないらしく、町田の両手が朝比奈の背から滑りシーツへ落ちていく。町田は皺の寄ったシーツを掴んだ。しかし、朝比奈がその手を外す。 「ほら、これを掴んだほうが安心しますよ」 朝比奈は自分の両手を握らせた。弱々しく町田が握り返してくる。 「そうだな、安心する……」 涙で濡れた顔で笑うから、意地の悪い質問をしたくなった。 「怖いですか、俺のことが」 町田は息を弾ませて笑った。熱い吐息が、朝比奈の胸にかかる。 「いや。初めてにしてはうまいなと思った。気持ちいい」 「う……」 ――気持ちいいって、そこまで聞いていない! 溶けそうなくらい熱くなっている局部が、更に充血してくる。 町田の言葉は淫らな爆弾だ。 ――言われる度に興奮する自分は悪くない。だから、激しくしてもいいんだよな。 そう言い聞かせると、朝比奈はふたたび動いた。さっきよりも強く大きく、自分勝手に。 「ん、待て……ああ、激しいって――」 朝比奈は構わず腰を振った。 やっぱり俺は猿になってしまったなと思いながら、精を放った。悶える町田を強く抱きしめる。 「あ――あ」 中出しされた瞬間、町田が朝比奈の腕を強く掴んだ。 与えられた快感が強すぎたのか、目を伏せ、瞼を震わせた。痙攣する町田の腿を抱え直し、朝比奈はゆっくり腰を揺らした。 「……ん、うう」 呻きながら腰を押しつける。 下腹にたまった快楽を、すべて町田の中へ注ぐ。 きっと朝比奈の放った飛沫は、町田の粘膜に染み込んで躯を侵しただろう。 何度も擦られ赤くなった内側が、白濁で汚れていく。そんな町田の中を想像して、朝比奈は笑みを浮かべた。 ひとつになれた悦びに、心が満たされた。 「町田、さん……」 愛しい人の名を呼び、強く抱きしめる。町田は息を弾ませながら、朝比奈を抱きしめ返した。 町田の顎に唇を滑らせ、頬をつかみ、躯をつなげたままくちづけを交わした。 吐息混じりのキスを繰り返すうちに、下半身がまた熱を帯びてきた。 「……ま、町田さん。俺……」 朝比奈の様子に気づいたのだろう。町田は笑って、朝比奈の頬を撫でた。 「朝比奈くん、しよ?」 「でも……」 「いっぱいしよ? 気持ちいいことなんだから、好きなだけしよう?」 「もう、あなたって人は……」 朝比奈は町田の腰を抱え直した。 揺らししただけで、さっき注いだ白濁が町田の窄まりから溢れ出した。 「ん、んーー」 町田は下腹部を片手で押さえながら、目を閉じている。 「はあ、は……大丈夫?」 「あ、ああ……」 町田が潤んだ瞳で、朝比奈を見上げる。 「ちょっと……く、苦し、いけど……すごくうれしいんだ……だか、ら……遠慮なんか、するな……」 朝比奈は頷くと、大きく腰を動かした。

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