5 / 35

第5話 今夜もいっしょ

自宅のマンションに着くと、互いに服を着替えた。部屋のクローゼットには、彼の私服も数着入っている。 私はワイシャツを脱ぎながら、彼の下着姿を見た。 白い無地の肌着にチェックのトランクスだった。どちらもゆったりして見える。 「少し痩せましたか」 労わるようにやわらかく抱きしめた。私の胸に顔を埋めて、彼は頷いた。 「夏バテだよ。もう年だ、体力が落ちてきたよ」 「三十三歳なんて、まだまだ若いですよ」 「二十五の若造に言われてもなあ」 汗ばんで少し湿った彼の髪を撫でた。散髪したてだから毛先が尖っていて、いつもよりも硬く感じる。 もっと深いところを触りたい。 肌着の裾から手を入れてみた。加賀谷さんは逃げなかった。手のひらを押しつけるようにして腰を撫でた。 動かしている手が熱くなっていく。自分の汗で滑ってしまう。情けない。加賀谷さんの肌着を胸まで捲り上げた。 「痛いっ」 「うわ、すみません」 爪が肌に引っかかってしまった。私は手を離した。 脇腹についた傷は、少し赤くなっていた。加賀谷さんは、大丈夫と言って痕を撫でた。 互いに黙った。目を合わせてくれない。照れているだけだろうけど、続きがしにくい。 「加賀谷さん、先にお風呂に入りますか。汗かいたでしょう」 「あ……そうだな。そうしてくる」 逃げるように加賀谷さんは浴室へ行った。 シャツを羽織った。脱力してしまう。加賀谷さんに触れていると、自分がいけないことをしているような気がしてしまう。 まっさらな新雪を踏みしめるような気持ちだ。心地よい罪悪感がある。 彼の肌に引っかけた右の人差し指を私は見つめていた。加賀谷さんの肌は痕がつきやすいのか。歯を立てれば、もっときれいに色づくのだろうか。 ここで押し倒したら加賀谷さんは逃げただろうか。 恋人だから当たり前だと思って受け入れるだろうな。 いや、と叫んでも、私に貫かれていたのだろう。どんなに怖くても耐えて、喘ぎながら初めての快感に戸惑うはずだ。 その怯えた顔を見て、私は更に興奮してしまうだろう。 焦らないように、焦らないように。そう言い聞かせながら、私はキッチンへ向かった。 加賀谷さんは、私が作った夕食を残さず食べた。外食よりも味が薄いからおいしいと言っていた。 食べ終わると、食器を洗ってくれた。その間に私は風呂に入った。

ともだちにシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

【R18】狼人(冷酷攻め)×人間 (強気受け)・ オメガバース
59リアクション
33話 / 79,853文字 / 120
1/18 更新
fujossy小説大賞応募中☆エクレアコミック様でコミカライズ化して頂きましたー♡
596リアクション
17話 / 37,268文字 / 20
2時間前 更新
過去作「ある幸せな家庭の幸せな日常生活」の連載版です。
765リアクション
48話 / 73,724文字 / 40
1/7 更新
誰も僕に近づかないで
272リアクション
15話 / 13,776文字 / 0
10時間前 更新
暗い、痛い、酷い、儚い
5リアクション
25話 / 49,440文字 / 0
16時間前 更新