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第3話

「お待たせいたしました。おもてなしの準備ができましたので、順番に回らせていただきます」    風見のイケボがそうアナウンスした瞬間、うおおおお、と野太い歓声が響いた。  客席の方を向いて立ち上がった常盤(ときわ)に、風見がガイドマイクを手渡す。  常盤は少し紅潮した頬を一度手の甲でこすると、 「そ、それでは、ミステリーツアーのおもてなし、雄乳(おちち)搾り体験をしていただきます」  と上擦った声でそう言った。  常盤の持つマイクの横から風見が、言葉を挟んだ。 「皆様のおもてなしは常盤が致します。私は常盤のサポートで付いて回らせていただきます」    おちち? おもてなし?  貝塚はまた疑問符を飛ばしたが、常盤の格好から、彼らの言う『おもてなし』が、エッチなことであるということはもうわかっていた。  常盤が、バスガイドの制服の前をすべて開いたままだったからだ。  ズボンのホックもファスナーも全開で、黒い布に包まれた股間が膨らんでいる様までも丸見えだった。 「それでは、ま、前の方から、ご試食していただきますね。進行方向右側の座席のお客様は、お、オレの、左の雄乳を、左側のお客様には、右の雄乳を搾って味わっていただきます。よろしくお願いします」  そう言った常盤が、まず、貝塚とは反対側に座る客の方へと歩み寄った。   「時間は、おひとり様二分です。お好みで練乳を掛けれますので、必要な方はお知らせください。そ、それではどうぞ」  ガイドマイクに乗って、常盤の声が淫らに滲んだ。  常盤背後に立った風見が、ひらり、と常盤の右側のシャツをめくった。  アンダーを着けていない常盤の、白い右胸があらわになった。   風見が常盤の背をぐいと押す。  常盤は乗客の方へと右胸を突き出す格好となった。 「練乳は、どうされますか?」 「い、いらないっス!」 「では、どうぞ……」  常盤が囁いた。彼の口元にはマイクがあるので、当然乗客全員にその声は聞こえた。 「い、いただきますっ」  男が叫び、常盤の右の乳首にむしゃぶりつく。 「ひあっ! あっ、あぅっ、さ、最初から、強いっ」  ビクンっ、と常盤が体を跳ねさせた。  常盤の乳首をしゃぶっている客側の座席の全員が立ち上がり、雄乳の試食を見ていた。  ちゅばっ、ちゅばっ、と吸い付く音がマイクに入っている。  そして、常盤の喘ぎ声も。 「ああっ、あっ、あっ、あっ」  わざとらしくない、恥じらいのある声だった。  まさか男の喘ぎ声で勃起する日がくるとは……貝塚は乱れる常盤を見ながら、鼻息を荒げた。 「はい、二分です」  風見が常盤の体を自身の方へと引き寄せ、客から乳首をもぎ離した。     男の舌が名残惜しそうにぷるぷるの突起を追ったが、途中で大人しく引き下がった。    口元を押さえて呼吸を整える常盤の、唾液でべたべたになった乳首を、風見が除菌シートで無造作に拭いた。 「ひっ、冷たいっ、ん、んんっ」  くにくにと赤い実を摘まんできれいに拭き取る様を、ショーのように乗客に見せて、風見は使用済みのそれを手首に掛けていたビニル袋へと入れた。 「つ、次はそちらのお客様……」  常盤が貝塚へと視線を流し、反対側のこちらへと移動してきた。  ふと見ると、紐パンから勃起した常盤の性器が飛び出している。  清楚な色のそれに目を奪われて、貝塚はまじまじと眺めてしまった。  なんだこれは、同じ男のブツとは思えないぐらいきれいな色だ。  おまけにぴょこんと勃っているソレの亀頭の下のくびれと根本の部分には……貝塚の見間違いでなければ、黒いハーネスが装着されている。 「あ、あまり見ないでください……」  常盤が恥ずかしそうに手で陰茎を隠した。その表情が美人なのにかわいくて、貝塚のボルテージが上がってしまう。 「おっぱいが弱くて……すぐにイっちゃうので、射精しないように締めてもらってるんです」  頬を赤らめて常盤がそう説明をしてきた。  そうか、先ほど風見としていた準備は、これだったのか……。  というか、乳首を舐めらただけでイくなんて、なんてエロいバスガイドさんなんだ!  ハァハァと貝塚は呼吸を荒くした。  先ほどと同じように常盤の背後の風見が、今度は服の左側をひらりとめくった。  常盤の乳首が目の前に迫って来る。  ピンクだ。  ベビーピンクの乳首だ。  乳輪も突起も少しぷくりとしていて、ものすごく美味しそうな雄乳だった。 「練乳は、どうしますか?」  常盤に問われて、貝塚は首を横に振った。  こんなにきれいな乳首を練乳で汚すなんて邪道だった。 「そ、それでは、召し上がれ」  誘われて、ぢゅるっ、と口の中に含む。  粒の弾力を舌で味わい、歯を軽く立てた。 「ひっ、あっ、あっ、あっ、あっ」  先端をレロレロと舐める度、歯でカリカリと齧る度、ちゅうちゅうと吸い上げる度に、常盤がビクビクと跳ねるのが可愛かった。   「ああ~っ、だめっ、だ、出せないのにっ、イきそうっ……」    常盤の膝がガクガクと揺れている。  彼の細腰には風見の腕が巻き付いていて常盤を支えていた。   「ガイドさ~ん、いまどうなってるんですか? 説明してください~い」  どこかの座席から声が飛んだ。  常盤が熱っぽい吐息を吐いて、マイクを握りなおした。 「ん……あっ、オ、オレの、おっぱいがっ」 「おっぱいが?」 「す、吸われてっ、あっ、あっ、あぅっ」  ひと際高い嬌声がこぼれた瞬間。 「はい、二分です」  無情なアナウンスに試食が中断された。  貝塚は渋々唇を離した。    常盤が貝塚の方へと倒していた上体を起こす前に。  貝塚の耳元で囁いた。 「貝塚さん、おっぱい吸うの上手いから、本気で感じてしまいました」  貝塚が思わず常盤を見つめると、彼は、うつくしい顔にほんのりと微笑を浮かべ、ひらりと貝塚に手を振って、次の客の方へと去っていった。  貝塚の息子はもうズボンの中でギンギンに勃起して、痛いほどになっている。  (しご)きたい、と思ったが後ろの乗客たちは大人しく順番を待っているだけで、誰も自慰などしていなかったため、貝塚も歯を食いしばって我慢した。  その後、体を捻って後ろを見ていた貝塚だったが、他の客が常盤のピンクの乳首に、どろりとした白い練乳を掛けているのを見て、あれはあれでアリだったな、と認識を新たにした。

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