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第38話

「まぁ、南森もまだまだこれからだし、いい人いるよ」 「そうだな。」 「でも、俺は南森にはずっと好きな人いるんじゃないかって思っていたけどな」 「えっ?」 「いや、なんとなく。なんか篠山と付き合ってるって聞いた時は、悪いけど、篠山のこと、本当に好きなのかなって思ってた。」 「そうか?」 「篠山を通して誰か見ているような感じだったからさ」 「、、、、」 「篠山がお前の好きな人に似ているのかなとか思ったよ。」 周りの友人が、感じることを、茉莉が感じていないわけはなかったはずだ。 たぶん、茉莉もどこかで感じながら一緒にいてくれたんだろう。 そう思うと、茉莉には、感謝でしかない。 離婚を話しした時もあっさり受けてくれたのは、どこかで覚悟していたのかもしれない。 覚悟、、か。 憩生も、あの時、覚悟していたんだろうか、俺に抱かれた後、俺の前からいなくなるということを。 自分でもひどい男だと思うが、 今まで付き合った彼女とは、 会っていても 体を重ねていても 甘いキスをしても 憩生のことを考えてしまうことはよくあった。 憩生ならどんなふうに啼くんだろう、とか、 どんな甘美な声をだすのだろう、とか。 抱きしめても、憩生はもっと腰が細いとか、肌が白くて髪の毛がやわらかい、とか どこかで比べては、本物とはちがうんだと思い知る。 そんなことだから、彼女に、本当に私が好きなのか?私を見ているのか?と詰られ別れることが多かった。 茉莉は付き合っている時は、そういうことはなかった。もしかしたら言わなかっただけかもしれない。 結婚してから半年後に、身体を重ねている時、どうしても行為に集中できなくて、茉莉に初めて言われた。 私を通して誰をみているの? と。 そのとき、このまま何も知らないふりして一緒にはいられないと思った。 だから、茉莉には、ずっと好きな人がいる、離婚してほしいと伝えた。 茉莉は怒ることも、泣くこともなく、罵倒することもなく、淡々といった。 わかっていた、、と。 わかっていたけれど、好きだったからいつか振り向いてくれたらいいと思っていた、と。 離婚はしてあげる。その代わり、今度はちゃんと好きな人と幸せになって、と言われた。 好きな人と幸せに。 でももう遅いんだ。 もう、間に合わなかった。 だって、好きな人は今どこにいるのか、わからないから。

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