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第39話

結婚式二日前。 茉莉がみんなで食事をしたいと俺の家に行きたがった。 お母さんに連絡したら憩生にも・・・と伝えてくれた。 大学に進学して一人暮らしをするために、家を出てからほとんど、憩生と会うことはなかった。 すこしでも会えば気持ちが止まらなくなると思って滅多に帰省しなかったし、 年末年始、家族で顔を合わせるときにどうでもいいような話を簡単にするくらいで、すぐに自分のアパートに戻った。 憩生も大学進学して、一人暮らしを始めたとお母さんから聞いていたから、憩生の帰省とずらして家に行ったり極力、会わないようにしていた。 憩生への思いを断ち切るためにはそれくらいしないと無理なんじゃないかって思っていた。 今回の食事会も茉莉は、結婚前の最後ということで夜は実家で過ごしたいと言っていたので、送り届けてから、新居に帰ろうと思っていた。 憩生が来るかどうかわからないとお母さんから聞いていたので憩生がいてもいなくても、淡々と時間を過ごせばいいと思っていた。 決めた時間より早めに実家について、夕食の用意をしていた。 寒いから、と鍋料理だった。 茉莉と準備をしていたら お母さんにお酒のつまみとか買ってきてほしいといわれて近くののコンビニで、買出しに家を出た。 何種類か酒のあてになるようなものを買って帰るとき、 自宅近くの公園で、二人の人影を見かけた。なにやら会話を交わしてそのあとに抱き合っていたのが視界に入った。 見覚えのある顔と、もう一人は背中しか見えなかったが、あの細いラインの姿は、顔が見えなくてもわかっていた。 見間違うはずがない。 憩生と要だった。 いつのまにあの二人が・・。 付き合ってる?? まさか。 心臓がバクバクして息ができなくなった。 えっ? 今、抱き合ってた? しばらくして、二人は、離れがたそうにして、別々の道を歩き始めた。 遠くからでも憩生の顔が見えた。 穏やかな幸せそうな顔だった。 その表情を見ただけでわかった。 二人は特別な関係なのだと。 そして一気に抑えていた衝動が、感情があふれてきた。 その時に、思ってしまったんだ・・・ <憩生を誰にもとられたくない>と。 食事会が終わって、茉莉を送ってから、実家に戻ったのはひとつのカケだった。 もしかしたら憩生がサンテラスにいるかもしれないと思った。 今日は、 初めて憩生と流星群をみた日と同じ流星群が、見れる日だった。 あれから何度もサンテラスで二人で天体観測をした。 二人きりですごす時間のなかで、綺麗な思い出だった。 きっと、今日もいるんじゃないかって思った。 確信はない。ただ、そんな予感がしていた。 サンテラスには、 毛布にくるまって寝ている憩生がいた。 そして、小さい声で俺の名前を呼んでいた。 その後、、苦しそうな声で <なんでそばにいないの、嘘つき>って聞こえた。 <<呼んだらちゃんとそばに行く>> 幼いとき約束したことを思い出した。 喘息発作で苦しんでいた憩生を安心させるためにした約束、だった。 切なそうに、自分の名前を読んでいる憩生をすぐに抱きしめたくなった。 もしここで思いが通じるのなら。 憩生も自分と同じ思いなら、このまま落ちるところまで落ちてもいいと思った。 憩生となら後悔はしないと思った。 茉莉のことで、背徳感を感じつつも、その時の自分の感情を止めることができなかった。 今まで堰き止めていた感情の足枷がなくなって、あふれる感情を止めることはできなかった。 憩生を、抱いて抱いて、抱きつぶした。 自分の欲望のままに、抱いた。 憩生の細い体を貫いて、憩生の中に入りたくて繋がりたくてとまらなかった。 このまま一つに溶け合いたかった。 もうすぐ、結婚するというのに、 そんなことも関係なくなるくらい、 非難も罵倒も、世間的な批判も、すべて自分が矢面に立ち憩生を守ろうとおもった。 後ろ指さされても憩生と生きていこうと思った。 いま、ここでつたえなきゃ、憩生の手を捕まえなければ、他の人のものになる。 それだけはどうしても我慢できなかった。 自分の想いを、、、 あの日、目が覚めたら真っ先に伝えるつもりだった。 結婚はしない。お前と生きていく、と。 何年かかってもいいから茉莉には謝罪し、そして、憩生とともに生きていくと。 だから、そばにいてほしい、と。 そんな俺の覚悟は、伝えることはできなかった。 目が覚めて、腕の中に確かにあった温もりは消えたいて、サンテラスには一人だった。 結婚式にも憩生は、参列しなかった。 憩生は、あの日から姿を消した。 まどろみのなか、憩生が、愛してるって言ってくれたこと、夢なのかとおもったけれど、いまならわかる。 憩生は、最初から俺の前から消えるつもりだったのだ。 愛してるという言葉を残して。

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