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第41話

「これで終わりね」 「あぁ」 「鍵は私が返しておくわ」 「よろしく」 俺は茉莉の差し出された手のひらに銀色のカギを置いた。 茉莉はぎゅつとそれを握りしめて微笑んだ。 そして家具もなにもかもなくなった広い部屋を見渡して一つ大きなため息をついた。 「ここに入居したときは、まさかこんなことになるんて思わなかった」 さみしそうに笑う茉莉に俺は何も言えなかった。 一年前は確かにここで新しい生活を始めようと思った。 ここで二人で笑いあってすごしたこともあった。 俺がうまくできればよかったと思うこともあったけれど、きっと遅かれ早かれこうなっていただろう・・。 「ごめんね。困らせるつもりはないの」 「あぁ」 「本当、ありがとうね、今まで。」 「それはこっちのセリフだよ」 本当に、茉莉には・・・・言葉がみつからないくらい感謝している。 こんなどうしようもない男に大事な娘を傷つけられたと殴られてもいいくらいなのに、こうして穏便に離婚できるのは茉莉のおかげだ。 茉莉は自分の両親に、結婚よりも一人で仕事をしていきたいと離婚の理由を話したそうだ。 がつんと思い切り殴られたほうが本当はよかったとすら思う。そこまで守ってもらえる価値なんてないのに。 「離婚届は・・出してもらってもいい?」 「あぁ」 茉莉から白い封筒を受け取り部屋から出ようとしたとき 「ちゃんと今度は幸せになるのよ」 茉莉が微笑んだ。 「今度こそ、好きな人と幸せになって」 好きな‥人・・か・・。 言われて思い浮かんだのはあいつだった。 きれいな顔してやわらかく微笑んで俺を見ている憩生だった。 会いたいな・・と思った。 純粋に憩生に会いたいと思った。 憩生・・お前、今何してる? 会って話したいよ。

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