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「日本画と洋画では全く違います 翠也君の刺激とは成れても師は無理です やはり同じ洋画の師を探すべきだと思います」 「   そう 御免なさい 絵の事は分からなくて」  そう云い 嶺子はふうと息を吐き 言葉を探す素振りを見せた 「あの子は 兄の様に貴方を慕って居りますのよ、」  紅い唇から出た言葉が 益々俺を遠ざけるとは思わない嶺子が続ける 「私も 翠也に兄が居たら此の様な感じかしらと 微笑ましく思って居りますし 」  繰り返される兄弟と云う言葉にぎりと胃が縮む  玄上も此の様な痛みを抱えて居たのかと場違いな事を思いながらもう一度頭を下げた  離れへ入り るりを探した 「るり」 「うん、」  寝転びながら鉛筆を動かしていたるりが顔を上げ 玻璃の目で俺を見る 「話はついたよ」 「うん」  傍らに座り込み 先程まで描いていたらしい百合の花に目を遣った  咲き誇る其れは 粗いが美しい 「 並木夫人には話をしてある 明日にも向かうから荷物を纏めておくんだ」 「   うん」  きゅっと桜色の唇を引き結び るりは俺に寄り添う 「  良いの、俺と来て」  言葉に 苦笑が漏れた

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