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 良い 悪い ではないのだ  翠也を堕とさず  絵を描いて行く道は  此れしか無い  何時か擂り潰された倫理の果てに 翠也を犯す日が来るのが恐ろしかった  傍に居れば 消し切れない埋火が再び燃え上がり 此の身を焼くのは必至だった  だから 早急に 離れたかった  けれどまだ後援無しに遣っていける程では無い  絵は描きたい  翠也の傍には居られない  俺の為にあっさりと筆を折ると云った翠也に対して 何とも意気地無い事か  臆病者の俺は るりを引き取りたいと云った馨に手紙を送った  俺共々では無理だろうか と 「俺は御前を選んだ 其れだけだ」 「   御兄ちゃんも卯太朗も 俺の事を好きだって云ってくれたけど 俺は一番じゃないんだね」  暖を取る様にるりが擦り寄り 脂肪が少なくて寒そうな体を震わせた 「   」 「 でも良いんだ 卯太朗は俺を選んでくれたんだから」  引き結んだ口から何の言葉も出せないまま 俺は其のひやりとした体を抱き締めた

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