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 そぅ と背中に置かれた掌に 馬鹿に成った様に心臓が鳴った 「今宵は一段と冷えますね」  服越しに 翠也が背中に体を預けて来たのが分かる  酷く軽くて  酷く華奢で  酷く頼り無くて  酷く愛おしい  二人の間に灯った温もりが 此の冷たい空気を裂いてくれる様で  俺は息を詰めて翠也の気配を伺った 「  温めては 貰えませんか、」  此の寒さの中 どっと汗が噴き出した 「  」  是とも否とも声が出ない  ただ汗ばんだ背中で彼の体温を感じるだけだ  風の立てる音が 遥か頭上で啜り泣きの様に聞こえて来る  手を 伸ばす  抱き締めた体は 記憶に在る物より微かに細く成っている様だった  腕の中で 華奢な体が撓る 「あっ  ぅ 」  込め過ぎた力に 翠也の呻きが聞こえた  けれど 力の緩め方なんて知らない  ただただ 渾身の力で抱き締め 其の首筋に顔を埋めた

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