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第26-1話校舎裏の見事な土下座

「太智殿、迷惑をかけて本当に申し訳ない!」  誰もいない校舎裏まで俺たちを連れて来ると、アシュナムさんは勢いよく俺に土下座した。  立った状態から土下座ポーズになるまで、一秒もかからなかった。なのに土下座の形を取るまでの動きがすごい丁寧で、芸術性すら感じてしまうほどだ。  何度も練習しないと身に着かないきれいさ……きっとここへ来る前に風習とか歴史とか調べて、必要になると思って練習したんだろう。  ケイロに対して怒った姿ばかり見てきて、怖い人というイメージが強かった。けれど、真面目で責任感が強い人なのだと分かって、前よりも親しみを覚えることができた。 「いえ、むしろ勝手に動いてすみません。あのままだとケイロが学校に居づらくなりそうな気がしたので……」 「ここしばらく相手の動きがなくて、我々が焦ってしまった結果です……殿下も太智殿もお怪我はありませんか?」  アシュナムさんが顔だけ上げて俺たちをうかがう。俺は大立ち回りをして軽く疲れた程度。でもケイロはその前から戦闘していたし大丈夫なのか? と、俺も距離を取りつつ横に立つケイロを見る。  一見すると問題がないように見えたが、ケイロはカッターシャツの裾をめくり上げて腹部を晒し、赤く腫れ上がった爪痕を見せてきた。 「ヤツらが現れた時に奇襲を受けてな……一撃を食らってしまった。こっちの服を着ていたおかげで威力は軽減できたがな」

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