59 / 59

第59話 指輪9

「陸兄ちゃん……これってもしかして……」 紬麦はテーブルの上のリングケースを潤んだ瞳で見つめる。 「開けてごらん」 紬麦は湯上りの肌をさらに紅潮させて、リボンをはずしてケースの蓋を開けた。 中には二つの並んだプラチナリング。 小柄な紬麦に似合うよう細身のシンプルなデザインにした。 俺は紬麦の左手をとり、薬指にそれを嵌めてやった。 「愛してるよ」 そう言って紬麦の手の甲にキスをする。 紬麦の瞳にはみるみる涙が溜まる。 「俺とお揃いのプラチナリング。 法律上俺たちは結婚できないけど…心の中では紬麦を俺のお嫁さんだと思っていい?」 「……っ、はい」 紬麦は俺が倒れるくらいの勢いで抱き付いた。 しっかりと抱き留める。 紬麦にも俺の左手の薬指にリングを嵌めてもらう。 「夢みたいです。陸兄ちゃんありがとう……うれしい」 紬麦は俺の左手を抱き締めた後自分の手を重ね合わせた。 「紬麦が卒業したら二人で結婚式、挙げような」 「はい」 涙を零しながら紬麦が笑顔で頷いた。 お互いの左手を絡めるように繋いで長い長いキスをした。 ◇◇◇ 指輪の効果は絶大だった。 家族にはナンパ避けと説明したが、本当にナンパも告白も減ったと紬麦が嬉しそうに話す。 「結婚してるって言ってもまだ話してくる人には陸兄ちゃんの言う通り、荒井先輩さんのところの赤ちゃんの話をしたらみんな何も言わなくなるんです」 紬麦は不思議そうにそう言った。 もし結婚指輪をしていても言い寄る輩には、『荒井先輩の子どもの話をしろ』と言っている。 『奥さんが来月出産なんです』というと大学生ならまず逃げていくだろう。 ふふん、若造どもめ。 お前たちに紬麦はやらない。 俺、大人気ない三十路でよかった。 紬麦は俺が指輪をしているのが嬉しいらしく、一緒に寝ていても俺の指輪を触ってくる。 「紬麦、そんなことしてたらまた押し倒すよ?」 「だって陸兄ちゃんもつむぎの指輪にさっきからキスしてるんだもん…… でももう一回して……?」 「……好きだよ、紬麦」 「大好きです、陸兄ちゃん」 学祭の製本の巻頭を飾った紬麦の書いた詩と短編小説。 偶然なのか指輪を題材にしていた。 俺らしきサラリーマンと紬麦に似た泣き虫の少年の恋。 もちろんハッピーエンドだ。 『つむぎの初恋』 おわり 最後までお読みくださり、ありがとうございました!

ともだちにシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

連載中
獣の涙
最悪な関わり方をして、でも本当は……ただ、結ばれたいだけだった。※本編完結済※
9リアクション
17話 / 9,214文字 / 17
2017/5/7 更新
事の発端は、ただのお手本のはずだった…
77リアクション
5話 / 12,339文字 / 100
2018/6/25 更新
ノンケ保険医×不健全ゲイ男子高校生
8リアクション
6話 / 9,803文字 / 0
2019/2/2 更新
人気俳優龍ヶ崎×平凡高校生颯斗シリーズ第1弾です!
15リアクション
4話 / 7,651文字 / 240
2019/9/11 更新
完結
Étude
魔性の≪アンファン・ドゥ・ラ・バル(サーカスの子)≫をめぐる、性と愛。
3話 / 18,803文字 / 10
2019/5/26 更新
主治医×ツンデレショタ などなど。
424リアクション
26話 / 31,376文字
4/1 更新