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第38話

 数日が経過した。太陽が見えないこの場所では何日が経過したのか分からないが、起床した回数と、出される食事で数日がせいぜいだろうと判断した。  その間、この円陣から出ようと試行錯誤しているのだか、上手くいかない。  グレイグが捕まっていたときも本人が壊すことはできなかった。騎士団の中でも指折りのグレイグが逃れられないのだ。アレックスにやれというのも無茶な話である。  その上、この陣はグレイグの魔力を基礎として作られている。ニコライがグレイグの魔力を狙ったのはアレックスの関係者だからではあったが、偶然ふたりの魔力の相性は最悪だった。突破は不可能に近い。  耳のピアスに触れながら、小さく舌打ちをした。  アレックスはまだ決心ができていなかった。  いないと思っていた肉親が見つかったのは喜ばしいことだ。不謹慎ながらアレックスはこんな状況だというのに嬉しいのだ。  けれどそろそろ覚悟を決めなくてはならない。  おそらく騎士団やマクスウェル邸では大騒ぎになっている。隊長であるアレックスが行方不明になったのはエドガーの呪いが原因だ。  ヴィクターやエドガーが自分たちを責めているのが容易に想像できる。  そして、グレイグである。  喧嘩別れしたまま、仲直りができていない。もしこのまま捕まっていれば、最終的には殺されてしまう。アレックスの遺体を彼に見せたいと誰が思うのか。  グレイグは誰の目から見てもアレックスに執着していた。そんなグレイグがアレックスと死別したら狂ってしまうかもしれない。  それを喜ぶ自身の昏い思考に辟易しながら、そんな未来を迎えてはいけないのだと、拳を握り締めた。 「どうしました?」  食事中であることも忘れて、アレックスは思考に集中していた。 「いつまでここに捕まっているんだろうなと考えていた」 「俺もそのことは考えてるんですけどね」  ニコライは部屋に持ってきた椅子に座りながら溜め息を吐く。 「こんなところに閉じ込めていても、目的は叶いませんし。もうこのまま殺してしまおうかと考えてます」  食事のおかずは何にするか決め兼ねている、と話すように気楽に言う。自分の命がおかずと同じなのは複雑な気分ではあるけれど、ニコライにとってはそんなものなのだろう。 「それに、俺も疑われ始めているし」 「どういうことだ?」 「そんなの知りませんよ。グレイグ隊長が何か勘付いたみたいです。このまま静かにしていてほしいですけど、無理でしょうね」  そんな会話をしていると、本当にニコライはアレックスを殺す気があるのかも分からなくなる。  当初は魔力を吸い殺されるのかとも危惧したけれど、円陣はそれほど多く吸収していない。  ニコライの瞳は相変わらずガラスのように無機質で、本当にアレックスに憎しみを抱いているのかも疑わしい。 「……お前は王城とここではまるで違うな」 「そうですか?」  ニコライは手に持っていたナイフを弄ぶ手を止めて驚いたようにアレックスを見る。  ここにいるニコライは確かにアレックスに憎しみを持っているけれど、騎士団にいるときよりも肩から力が抜けているように思えた。本人は無意識でしていたらしい。 「ここにいるニコライはつまらなそうだが普段よりも気楽そうだ」  訓練所ではくるくると表情が変わり、まるで犬のようだと思ったこともある。それくらい感情の起伏が分かりやすかったけれど、今思えば演技だったのかもしれない。 「騎士として働いている方が、違和感があるということですか」  目を細めると、男の周囲の魔力が蠢く。どう見ても不機嫌にしか見えない。

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