7 / 52

第7話

 ◇◇◇  数日後。  天王ならびにシィタの護衛として同行した従者の一人であるリオは、天界とは比べ物にならないほど劣悪な環境と歪曲した空間の中で、例えることのできない気持ち悪さを感じていた。  魔界という、黒一色で塗りつぶされたかのような暗黒の世界。そして魔界にある唯一の城といわれる『アヴィス城』の外観は天界の城と同等に立派で上品な造りだったが、中からはドラゴンやキメラを彷彿とさせる怪獣の唸り声が聞こえてきて、不気味さと狂気を漂わせていた。カオスとはこのことかと、身を持って思い知らされる。これで平静を保っていられる者は天王と神族くらいだと思っていたが、平然としていたのは天王だけではなかった。  シィタだ。  魔界に着くなり、卒倒してしまう従者が続出した。リオは吐き気がするものの、持ち前の体力と精神力でなんとか持ちこたえることができた。しかしそんな中、シィタは不調を訴えるどころか、倒れてしまった従者に肩を貸し、毅然とした態度で励ましの言葉をかけていた。さすがは、『母樹』から生まれた子というところか。リオは内心で、安堵の息をついていた。  中級魔族によって案内されたのは『アヴィス城』の奥にある客室だった。待遇は歓迎的ではなかったが、案内された客室は上質で、気品に溢れていた。これでもっと照明が明るければ言うことなしだと嘯きながら、リオはソファに腰を下ろした。  隣には、荷物を整理し終えたシィタがちょこんと腰を下ろしていた。 「よかったね。すぐにお部屋に通してもらえて」 「ああ。環境の違いの所為で、倒れる奴らが続出するって安易に予測できてたんだろうな」  その倒れてしまった従者たちは、自分たちよりも先に魔族によって別室へと運ばれていった。心配だったが、天王から「安心なさい」と言われてしまえば、この客室で大人しくしているしかない。  その天王も、天王付きの護衛と共に上級魔族によって別室へと案内されていったため、この客室にはリオとシィタの二人しかいない。  シンと静かな空間で、シィタはリオに話しかけた。 「天王様、大丈夫かな」 「天王様には俺なんかよりもずっと頼もしい神族の護衛がついているし、神獣も肌身離れずついている。それに今まで何度も魔界に足を運ばれているんだ。大丈夫だろ」  神獣とは天界に生息する獅子の形態をした獣のことである。中級魔族はさることながら、上級魔族に匹敵する力を持っているため、護衛として付いている者以上に頼もしい存在である。

ともだちにシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

【R18】勇者は魔王を封じる旅に出た。世界は救われるのがお約束。そう「世界は」救われる。
9リアクション
3話 / 8,854文字 / 89
2017/10/27 更新
「雨を題材にした曲作ってくれ」それが彼からの最初で最後の依頼だった。
14リアクション
5話 / 2,263文字 / 24
2019/6/15 更新
大学生×妾の詩人。雨の日の逢瀬。
28リアクション
11話 / 9,851文字 / 71
2019/7/9 更新
優しく男前な庚に夢中な亮平は会うたび彼に抱かれていたけれど、それは単なる身代わりでしか無くて…。
140リアクション
6話 / 12,499文字 / 190
2019/8/15 更新
天才科学者ケイト・キャラハンが甦らせたのは、アンドロイドになった兄だった――。
425リアクション
10話 / 9,691文字 / 80
2019/10/26 更新
これは、ある1人の男の子の物語。
4話 / 5,366文字 / 0
2時間前 更新