7 / 13

ヒミツ 後編(オメガバース)

「いっ、た、何、だよ!急に…!」 そして頼人は押し倒された時に気付いた。臀部から股へと滴るくらい濡れていて、咄嗟に足を閉じる。 これはΩ特性のものだ。 この時にとどめを刺されたように、頼人は自分は本当にΩなんだと思い知らされてしまった。 「なぁ、頼人。中学の時に頼人の実家で一緒に見たニュース番組で、Ωを無理矢理襲ったαの事件が増えているっていう特集しててさ、その時にαなんて嫌いだって言ったの覚えているか?」 押し倒されて見上げる景の表情は口角は上がっているが、鋭い目線は頼人から全く視線を離そうとはしなかった。 一体何の話をされているのか分からない頼人は、景を押し退けようとするが、強い力で両手をベッドに抑えつけた。 「…何の話だ。とにかく、離し「覚えてないならいい。でも俺はαって判明したあの日からずっと隠してきた。頼人に嫌われたくないからな」 は? 一瞬、聞き間違いかと思考が停止する。衝撃の発言のは真逆に、意志とは反してじんわりと増して帯びていく熱に身体の力が抜けてくる。 「頼人がβと聞いて悔しいって思う反面、誰の番にもならないって思うとそれでいいって思ってた。…だから俺嬉しかったなぁ。頼人がΩって聞いた時」 まるで他愛のない会話をしている感覚でスラスラと思いがけない台詞を景は口から溢す。 「正直、βって嘘吐いたままでも良かったけど、それじゃ俺が足りなかった。我慢できたけど、多分頼人がΩだって言った瞬間色々と切れた」 頼人は一体何を聞かされているんだと頭がついていかずに脳内で警報だけが鳴り響く。 「さっき俺のフェロモン感じ取った時、すげぇ嬉しかった。嘘吐いてごめんな?」 一体全体、何が起きてるんだ。 顔を傾げてふわりといつも通り優しく笑う景は、愛おしそうに頬に手を当ててきた。やけに冷たい手のひらが頼人の沸騰しそうな熱を吸収していく。 頼人は、ギリギリの理性で繋ぎ止められているが、Ωの発情期に抗えずにおかしくなりそうだった。 景がα?そんなわけない。今までずっと同じβとして話だってしたはずだ。 それが本当なのか嘘なのか、何故こんなことになっているのか受け入れられない。けどこの状況で二人きりになるのは間違っている。危険だ。 「景。と、とりあえず、それが本当なら今すぐ出て行ってくれ。…駄目だ、こんなの」 「何で?俺の事好きなんじゃないの?」 景の台詞で目の前が眩むくらいドキッと心臓が高鳴った。 何故?いつから分かってたんだ。 「な、に言ってんの。おれは、その」 「俺はずっと気付いてたよ。だって俺も頼人が好きだから。幼馴染はなんでも分かっちゃうんだよな。逆に発情して素直になれないのも凄いな。まぁそんな頼人も好きだけど。…頼人ー。やべぇ。良い匂いする。堪らない」 「景…!やめろって!」 景が首元に顔を埋めてくると、大きく息を吸った。 まるで自分の事が好きだと告げるだけでも興奮が高まっているのに、肌が密着して景の匂いがどんどん強くなっていく過程に嫌でも身体がムズムズしていた。 身体全身に熱がこもって苦しい。もう限界だ。触って欲しい。嫌だ。けど、景が好きだ。のまれたくない。 感情がグチャグチャで、肩を上下するほど息が上がり、意識が朦朧としていく。 そんな中、もしかしたらその好意はΩの匂いに当てられて、冷静になってないんじゃないかと、微かに嫌な事が横切った。 「…今、俺の匂いにあてられているだけだ。景の事…その、好きだけど、きっと冷静になった時、後悔して欲しくないんだ」 「…これで俺との子供が孕めるな」 「っ、は、…な、に?」 「誰かに取られるくらいなら、もう俺しか見れないようにした方がいいよな?だって頼人は俺の事好きなんだろ?なら、αの俺が番になった方がいいんじゃないか?」 喉に何かが詰まったような感覚に、言葉が出なかった。 景は頼人の頸に手を滑らせると、優しく指先で撫でてきた。 少し触られただけで甘い吐息が漏れて、ゾクッとしたものと、身体全身に血が走るような感覚がした。 目の前に居るのは本当に景なんだろうかと頼人は言葉を失ってしまう。景はまるで頼人の言葉なんて聞こえていないようにも見えた。 「頼人、ここかな」 すると景の左手が頼人の下腹部に指でなぞるように沿わせた。そこはきっとΩ特有の子宮がある場所。 あぁ、そうだ。景が言ってた孕むとはそういうことで…俺と景の子供?いや、もうダメだ。意識が完全に景になら孕まされてもいいと思っている。 景はΩのフェロモンにやられて我を忘れてしまったのか、今までずっと仮面を被っていたのか分からない。…多分どちらも正解かもしれない。 景のことは何でも分かってるつもりだったはずなのに。きっと俺がΩに変異してしまったことが引き金になってしまったんだ。 それでも景の事が好きだとしか思えない俺は、これが甘美な夢なら醒めないでほしいと願っている。 Ωの発情期に耐えられずに限界を達していて、頼人は抵抗することも忘れてしまい、気が付けば景の服をギュッと握りしめていた。 景は「可愛い」と囁くと、酷く優しい笑みを浮かべて、 「頼人、これからもずっと一緒に居ような」 そう言って頼人の唇に口付けたのだった。 END

ともだちにシェアしよう!