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キミの囁きに、震える。 【3】

 快感に浸り、もっと続けてほしくて身をよじらせていた俺に、「そう言えば」と、低い呟きが落ちてきた。 「武田?」  次いで、冷ややかな声で俺の名が呼ばれる。 「なぁ? お前、さっきあの人と何を話してた? 俺の見てる前で堂々と顔を寄せ合ったり、内緒話してイチャついていたろう? お前、いい度胸だな」 「え? 『あの人』って、もしかして宮さまのこと? あれはそんなんじゃ……あっ、やあぁっ」 「動くな。口答えするな」  違う、イチャついてなんかないのに!  そう言いたいのに、さらに強まった土岐の指の刺激に、出せるのは喘ぎ声と荒い息づかいだけ。  土岐が言う『あの人』とは、2年のレギュラー、花宮煌《はなみや こう》先輩のことだろう。都の優秀選手に二年連続で選出されている、俺の憧れのバスケプレイヤーだ。  尊敬の念を込めて、俺はいつも『宮さま』と呼んでいる。だけど――。 「ここをいつも可愛がってやってるのは、誰だと思ってる?」 「んあっ! あぁっ……はんっ……」 「ほら、言ってみろ。こんなにコリコリになるまで弄って、お前をいつも善がらせてやってるのは、誰だ?」 「あぁっ、そこっ……やっ、ああぁっ!」  そんな風に同時にクリクリされたら、俺っ、もうっ……! 「ん? 返事はどうした。言えよ。あの人がこの耳に、どう触れたんだ?」 「違っ……触れて、ないっ。宮さまとはフォーメーションの話をしただけで……あぁ、耳っ、舐めないでぇ」 「駄目だ。触れてなくても、あんなに密着していたら吐息くらいはかかったろう? なら、消毒しないとな。それに、その『宮さま』っていうの、いい加減やめろ。俺よりもあの人のほうを特別視してるようで、ひどく気分が悪い」 「そんな、ことっ……あぁっ、んんっ」  『消毒』と言い、耳殻に沿うようにねっとりと舌を這わせてくる土岐が、嫉妬という熱を俺にハッキリと知らしめてくる。  あぁ、駄目だって、それ。  俺はただ、宮さまのプレイに憧れてるだけなんだよ?  なのに、耳が熱いから。  すごく熱くて、熱くて。それで、嬉しくて。お前の舌の感触が気持ち良すぎて。  俺、変になっちゃう。 『――武田』  耳元に与えられる官能に震えたその時、宮さまが俺を呼ぶ声が不意に聞こえたような気がした。 「あ、やだ……」  ここには、俺と土岐しか居ないはずなのに。  背中に、土岐じゃない別のひとの体温を感じている。ユニフォームが捲り上げられ、耳元には熱い吐息がかかる。耳朶をかすめていく舌の感触まで、まざまざと感じてしまう。  憧れ以外の特別な感情は何もなかったはずの宮さまなのに、あの人の甘い低音が聞こえる気がする。  土岐が、こんな風に熱く妬心を見せてくるから。だから、お前にされるように宮さまにも触れられてる錯覚にだって陥っちゃいそうなんだ。 「あぁ……土岐ぃ、俺っ……」  でも、どうしよう? これじゃ、俺……まるで、アレだよな?  乳首をお前に弄られながら、お前が耳に残した熱に、宮さまの幻を感じちゃうなんてさ。  ふたりに同時に責められてる妄想をしちゃうなんてさ。そんなの、まるで……まるで俺っ……。 「何だ? 目ぇ潤ませて、そんなに腰をひくつかせて。乳首だけじゃ足りないのか? ずいぶんな淫乱だな」 「……っ」  頭に浮かんでいた恥ずかしい言葉をそのまま言い当てられて、身体が更にひくひくと跳ねた。

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