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恋のバカンスは、予言通りにはいかない!?【秘密 #4】

「……ああぁ、疲れたぁぁ」  浴室に、溜め息混じりの声が響いていく。虚しく反響するその音を聞きながら、もうひと言。 「そんで、怖かったぁぁ」  夕飯を一緒に食べて、少ししてから帰っていった土岐が見せていた表情を思い出し、再び溜め息が出る。  土岐ってば、なんで、あんな怖い顔してたんだ? 茉莉には笑いかけてたけど、俺には冷ややかな眼差しだけ。 「それから……気持ち、良かったぁぁ。すごく……すごく良くて……逆に怖くなるくらいだったけどぉ」  こっちは、ごくごく小さく、口内だけで呟いて、つけ加える。そっと目を瞑り、記憶を辿った。 ―――――――――――― ―――――――― ―――― 「――武田、買ってきたぞ」 「あ、土岐。悪かったな。茉莉とコンビニまで行ってもらって。そんで、アイツ、風呂入った?」  夕飯後、茉莉と一緒にアイスを買いに行ってくれた土岐が冷凍庫にそれを入れてくれる横顔に、洗い物を終えた手を拭きながら礼を言った。 「あぁ、今、浴室に行った。お前も終わったようだな。――なら、来いよ」 「え? どこに? 俺、今コーヒー淹れようと……」 「後でいい。それより、こっち来い」 「あっ……」  強引に手を引かれて連れてこられたのは、三階の俺の部屋。 「土岐? 何……あっ、んっ……」  部屋に引っ張り込まれるなり、唇が重なった。  力強く俺の腰をさらった土岐によってドアに背中を押しつけられ、その身体と唇を受け入れる俺の身体の重みで、ドアが軋んだ音を立てた。  それくらいの、性急なキス。 「……ふぁ……ぁ……えっ? あ、あの、土岐っ?」  俺の肩をドアに押しつけていた土岐の手がゆっくりと下に滑りおりていたのは気づいてた。  けど、それがいきなりベルトにかかるとは思ってなくて、絡めていた舌を外して土岐の名前を呼んだんだ。 「静かにしろ。誰が拒否していいと言った? ほら、もう一度だ。舌を出せ」 「あっ、んんっ……んっ」  けど、また深く口づけられて。 「んっ……ふっ……ふぁっ」  ベルトもあっさり外されて、ズボンは足元にずり落ちていた。 「ふっ。もう、固くしてたのか? いつからだ?」 「あっ、やっ……聞かな……で……あっ、あぁ……やぁっ」  遠慮のない手が、下着の上から膨らみに触れる。フニッと握り込まれて、さらに体温が上昇していく。  土岐の長い指が固さを確かめるようにペニスに絡み、その感触に身を戦慄かせながらも、ふるふると首を振った。  いつから、だって? そんなの、お前にキスされた瞬間から半勃ちになってたに決まってるっ。  お前の舌もキスも、それくらい気持ちいいんだよ。マジで。 「……っ、知らな……そんなの、俺、知らなっ……」  でも、んなコト、面と向かって言えるわけねぇっつーの! 「知らない? ふーん。触る前から、ここをこんな風にしておいて?」 「あっ!」  艶やかに変化した声が、空気を震わせた。  そして、『こんな風に』と、親指と人差し指で摘まみ上げたモノを下からきゅっと強く扱き上げられ、横に振っていた首が勢いよく仰向く。 「じゃあ、普段のお前はどうなのかを確かめないといけなくなるが、それでもいいか?」 「はっ……ぁ、やぁ……」 「毎日、毎日。ここがどうなってるか、俺が触れて確認してやることになるが、いいのか?」 「あ、んっ……あ、あぁ」 「いつでも、どこでも。俺の手でこの部分をこんな風にすることになるが、構わないんだな?」 「あ、土岐ぃ……あぁ、あっ」  半勃ちどころか、もうすっかり固くなってしまってる性器を揉みしだきながらの土岐の言葉の内容に、俺の身体は震えっぱなしだ。  嬉しくて。  土岐に。大好きなコイツにそうされることへの期待で、ひくひくと全身が震える。 「ん……うんっ。俺、それでいい」  だから、喘ぎに震える唇を懸命に動かして、大好きな土岐の黒瞳を覗き込んだ。 「確かめて? お前のその手で」  そろりと手を伸ばし、土岐の髪にそっと触れてみる。  指通りのいい、綺麗な濃茶色の髪。普段、この髪に誰かが触れてるのを見たことがない。  土岐は、俺がこんな風に唐突に髪に触れても、じっとしてる。ただ、俺を見てる。  嫌がる素振りがないことが、泣きそうなほど嬉しい。  胸が痛いほどの愛おしい気持ちを込めてサラサラとしたその髪をかき上げ、続きを伝えた。 「いつでも触ってよ。構わないから……あっ! はぁ、ぁん」 「わかった。取りあえず、今からたっぷり確認してやる。――武田。今度は、お前から絡めてこい」  ペニスを擦り上げる手の動きがさらに遠慮のないものになり、『お前から』と口を軽く開けた土岐の表情に、くらりと眩暈がした。  あぁ。俺の好きな男は、なんて艶やかに誘ってくるんだろう。  何をどうやっても、抗えない。  喘ぐ声をそのままに、言われた通り土岐の舌を迎えにいき、濃厚な口づけと、俺を翻弄する指の動きに身を任せていった。

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