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「……んぅっ……!」  暗闇の中で視線がかち合う。恥ずかしさで今にものぼせてしまいそうだ。  そんなミシェルにはかまわず、男は唇に割り入って巧みに舌を絡めとる。飲み込みきれない唾液が、口の端からこぼれ落ちた。 「……っん、……ふッ……」  頭がボーッとする。腹の奥が燃えるように熱い。息苦しくなったミシェルは、男の背中に腕をまわして数回叩いた。  それでも男が解放してくれる気配はない。さらに歯列をなぞられ、口内を犯される。 「……ン、……っぅ……」    触れあっている肌が熱い。頭がまわらない。体が溶け出しそうだ……。 「……はァっ……」 「……もういい」  長い口づけの後、男はミシェルを開放した。息を乱したミシェルの口元を指で拭い、体を抱きあげそっとベッドに横たえた。 「ミシェル」 「……っ……?」 「全然だめだ。話にならない」 「……っ」  恥ずかしさと悔しさで泣きそうになりながら、ミシェルは男を睨みつけた。 「仕方ないだろ?お前は一番の武器を使わなかったんだから」 「……え……?」 「分からないか?」 「……やっ……!」  男は立ち上がり、明かりを灯した。慌ててベッドに潜り込もうとするミシェルを、軽々と組み伏せる。 「お前は美しい」 「……っ……?」 「見てるだけで興奮するよ。こうして明かりがついていれば」 「……なっ……」  耳元で囁く優しい声に、心がざわめく。顔がかぁっと熱くなり、背筋が震えた。 「美しいものは、その存在だけで価値がある」 「……」 「安心しろ。壊したりはしない」  あれだけ恐ろしかった行為に、恐怖を感じない。首筋に唇の感触があり、ミシェルは「ぁっ」と小さく声をあげた。 「……いい声だ」 「……っゃ……」  首筋に何度もキスが落とされる。生まれて初めて経験する優しい愛撫に、ミシェルの胸は震えた。 「男に触れられるのは初めてか?」 「……」 ……言いたくない。でも何故だろう、この男を騙せる気がしない。 「ミシェル」 「……初めてじゃない」 「そうか。じゃあ触られたことがある箇所をすべて言え」 「……え?」 「早く」 「……ほとんど全部……」 「だめだ。具体的に」 「……髪……額……頬……首筋、胸……腹、腰………性器」 「性器って?」 「……これ」  ペニスを触ってみせる。男は無表情で見下ろしている。 「……それと……尻と……尻の穴……脚……」 「それで全部か?」 「……うん」 「ふっ……そうか」  いったい何故こんなことを聞くのだろう?男の思惑がわからない。

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