235 / 258

第106-3話想うがゆえに

「先王陛下が亡くなられ、私の心は完全に砕かれました。それでもしばらく理性を保ち、踏みとどまっておりましたが……限界でした。後のことは陛下がご存知の通りです」  エケミルがそっと長いまつげを伏せる。  公私を混同し、国を乱したことに怒りを覚えてしまう。  しかし、その心は多少理解できる。  最愛の人を亡くし、完全に報われることがなくなったエケミル。  その後から私へ行ってきた仕打ちは、父への恨みや慟哭をぶつけていたのかもしれない。  なぜ置いていった。  我が子を苦しめ、国を悪意で蝕み、壊そうとする私を止めに来ないのか――そんな嘆きが彼から聞こえてくる気がする。  私も最愛の者を――イメルドを失えば、どうなるか分からない。  エケミルの姿は、いつか私が辿るかもしれない末路。  それでも私は――。 「……私もこの国も、お前とともに滅ぶつもりはない」  私の声にエケミルが目を開く。  そして力なく微笑んだ。 「陛下が私に投降して下さるなら、国と後宮にいる者たちを助けますが、いかがですか? 道連れは先王陛下の面影を持った、貴方様で十分なのですが……」 「私と宰相を同時に失えば、国を攻められている最中に立て直すことはできぬ。滅ぶと分かっていながら、目先の甘露につられる訳にはいかない」

ともだちにシェアしよう!