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第1話
「いいか、和希(カズキ)。よく聞きなさい。オメガは私たちアルファと比べて、とても弱いんだ。だから守ってあげなくてはいけないよ」
幼い頃から、父にそう躾けられ、俺は生きてきた。
この世界の人類は性差とは別に、三つのカテゴリーに分けられる。
身体能力に優れ、頭脳明晰なアルファ。
平均的な能力をもつベータ。
そして華奢な肉体に、あまり賢いとはいえない頭脳を持つオメガ。
この三種が共存し、俺達の世界は回っている。
オメガは男でも肛門の奥に子宮があるため、男女共に妊娠可能な肉体をしている。子が成せるほどに体が成熟してくると、オメガはヒートという発情期を迎える。
ヒートは一か月から三か月に一度、一週間ほど訪れ、その間に性交を行うと、かなりの確率で妊娠する。
しかしヒート時、オメガはうなじから他者の性欲を刺激するフェロモンが勝手に放出されてしまうため、それにあてられたベータやアルファにレイプされてしまい、望まぬ妊娠をすることも多い。
そうやって妊娠をしてしまったオメガの同級生が今、俺の目の前にいる。
彼女は青ざめた顔で俯き、周りからの視線に耐えていた。
一人のアルファがその子に近づき、大きな声で言った。
「なあ、お前よく大学に来れたな。お前のせいで郁夫の奴、無理やり留学させられちまったんだぜ」
三か月前彼女が大学構内でヒートを起こし、傍にいた同級生のアルファにレイプされ妊娠したという噂は、かなり広まってしまっていた。
「お前、郁夫からいくら慰謝料貰ったんだよ?もしかしてそれが目当てで、学校でわざとヒート起こしたとか?」
何も言わずに唇を噛む少女に焦れたのか、男が近くにあった机を蹴った。
「いい加減被害者面すんの止めてもらえませんかー?お前みたいな三流オメガのせいで留学することになった郁夫のがよっぽど可哀想……」
俺は男につかつかと近づくと、その肩を掴んだ。
「いい加減にしろよ」
男は掴まれた肩が痛んだのか、一瞬顔を顰めたが、俺を見てへらりと笑った。
「これはこれは。オメガの王子様、久我山君じゃないですか。またこいつらの味方になろうって?」
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