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第4話

 相手、留学したって言ってたよな。  番を残して行くなんて、この子がヒートの時どれだけ苦しむか。  俺は彼女のうなじを噛んだ身勝手なアルファに怒りを覚えた。  彼女はそんな俺の内心も知らずに、顔を上げて笑顔で言った。 「でも久我山君のおかげで来て良かった。アルファにも優しい人はいるんだって分かったから。庇ってくれてありがとう」  彼女はそう真っ赤な顔で告げると、自分の席に走って戻って行った。  俺は複雑な感情を持て余しながら、彼女をじっと見つめた。 「またファン増やしてんじゃねえぞ。王子様」  俺はそんなことを言う、自分よりよっぽど王子様な見た目の隣の男を見てため息をついた。  俺の母親は女性型のオメガで元々体が弱かった。  そして俺を出産した時の出血が原因で、そのまま亡くなった。  親父はそれから再婚もしないで、一人で俺を育ててくれた。  親父は俺に何度もオメガを傷つけるようなアルファにはなるなと説いてきた。  俺はその教育のおかげで先ほどのようにあからさまにオメガを馬鹿にするアルファを見るとつい我慢できなくなり、口が出て酷いときには手が出てしまう。  そんな俺の性格をよく知っている唯人は「喧嘩するなとは言わない。だが喧嘩になりそうになったら必ず俺を呼べ」と言った。 食堂でカレーを食べながら、唯人が言う。 「まあ、アルファには嫌な奴が多いわな。自分がアルファってだけで、偉そうな奴とか。でもだからってオメガが全員か弱くって良い奴かって言われるとそれも違うと思うけどな」  オメガは皆、弱く、庇護の対象だと思っている俺は唯人のその言葉に首を傾げた。  唯人は嫌な感じの笑みを浮かべて、そんな俺を見る。 「オメガは結構強かだぜ。まあ、そういうのが分からないところが和希の可愛いところだけど」 「馬鹿」  そう言うと唯人は笑った。 「なあ、今晩暇?」 「予定はないけど、何?」 「クラブ行かねえ?」  唯人の誘いに俺は顔を顰めた。 「行かない。俺、クラブ嫌い。煩いし、空気悪いし」  俺の返答に唯人がぷっと吹き出した。 「まさか和希、前回の気にしてんの?だから行きたくないわけ?」 「気になんかしてねえよ」  赤い顔で言い返す俺を唯人がにやにやと見つめる。

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