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第8話

 抜くだけとはいえ、この行為を受け入れてしまったのは、唯人が本気で俺を抱くつもりがないのが分かっていたからだ。  唯人はいつも交際相手に女性を選んでいた。  男の尻に突っ込むなんて考えられないね。汚らしい。  男性のオメガ告白された時、そう言って唯人が振ったのを、俺は目撃したことがあった。  だから俺はある意味安心して唯人に身を任せることができた。  唯人が俺の性器の先っぽの穴を緩く、いたぶる。 「うわっ」  腰が勝手に揺れる。 「ほら、和希も、ちゃんとやれよ」  そう言われて俺は唯人の、くやしいが俺の二倍はあるモノをゆっくり扱き始めた。  唯人が息を吐き、目を閉じる。  こいつまつ毛長いよな。  俺は唯人の整った横顔を眺めながらそんなことを考えていた。  唯人も俺のモノを握る手に力を込める。  俺も目を閉じ、快楽を追った。 「あっ、あっ、ああ」  俺の喘ぎは、店内のBGMにかき消された。  唯人もイッたらしく、俺の手の中で大きなモノがドクンと何度も脈打った。  目を開けると、唯人が間近で俺を見つめていた。 「なあ、キスしていい?」 「ダメ」 「何で?」 「なんかキスはまずい気がする」  これもいつものやり取りだった。 「ちぇ」  ちっとも残念そうじゃなく、唯人は言うと、まだ硬い自分のモノをしまい始めた。  俺はどこか美鈴に罪悪感を覚えながら、唯人と同じように、身繕いを始めた。  クラブに行った翌日、朝から酷い寒気がして目が覚めた。  関節が悲鳴をあげていて、どうやら熱があるらしい。  普段、熱なんて滅多にださないせいで、俺の家には体温計すらない。  高校卒業後、いつまでも実家で主婦業を頑張る必要なんてない。  無事志望校に合格したのだから、勉強に集中しろという父親の勧めもあり、  大学近くのマンションで俺は一人暮らしをしていた。  いつもなら広々と快適に感じる1DKの部屋も、具合が悪いときは寒々と、心細く思えてしまう。  着信音が響き、スマホに飛びつくと、唯人だった。 「おはよう。朝から悪いんだけど、古典のノート後でちょっと見せてくんない?俺、先週、寝ちゃったみたいでさ」 「唯人」  俺は唯人に泣きついた。

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