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第17話

「和希」  上半身を起こしている俺に、親父が駆け寄ってくる。 「心配したんだぞ。体調はどうだ?」  そう聞かれて俺は、熱も、興奮も治まっているのを感じた。  試しに白いパジャマを着せられた腕を持ち上げ、鼻を近づけてみたが、独特の病院らしい消毒液の匂いしかしない。 「うん、もう平気。それより俺、どうしてこんなところに」  その時病室に、白衣を着た初老の男性が入ってきた。 「気がついたようですね」  男は金沢と名のり、内科医だという。  今日の昼頃、俺は意識を失った状態で大学近くのこの総合病院に、緊急搬送されたらしい。 「自分の体に起きたことを和希君はどれだけ理解していますか?」  そう問われて、俺は緩く首を振った。 「正直全く。高熱がでたと思ったら、翌日には体がおかしくなって」  唯人との行為を思い出し、俺は不自然に顔を赤らめた。 「事前にお父様にはお話ししたんですが」  金沢はそこで言い淀み、父親の顔を見た。  父親が険しい顔で一度深く頷く。 「和希君。君に起こった症状から考えて、もう一度、性差検査を行いました。その結果君は……オメガだと判定されました」 「まさか、あり得ない」  ハッと笑いながら俺は言った。  性差検査とは、自分がアルファ、ベータ、オメガのどれに属しているかを判定するための検査だ。  産まれた時と15歳の時、全国民に義務づけられている検査で、俺はそのどちらの時もアルファだと判定されていた。 「たまにあることなんです。性差検査の精度は完璧ではない」 「なら今回の検査で俺がオメガと判定されたことだって、間違いの可能性がありますよね」  俺は医者を睨みつけながら、鋭く言った。 「それはあり得ません。何故なら君の体に起こった現象は、間違いなくヒートだからです」 「何言ってんの、先生。体が熱っぽいのは風邪が治りきっていなかったからで、第一アルファの俺にヒートなんてくるわけ」  金沢が申し訳なさそうにこちらを見ているのに気づき、俺は口をつぐんだ。  金沢が俺の首を指さす。 「アルファがうなじを噛まれても、その跡はすぐに消える。傷が残って、番持ちになれるのは、オメガだけなんです」

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