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第21話

 メールを確認すると、「明日の待ち合わせどうする?」と書かれている。  まずい。今日は美鈴とデートの約束をしていた日だ。  俺は慌てて美鈴に電話をかけた。 「和希?」 「美鈴。悪い、体調崩してて連絡できなかった」 「えっ、それはいいけど、大丈夫なの?」 「ああ、熱も下がったし問題ないよ」 「でも、じゃあ今日会うのはやめておいた方がいいね。来週に延期しようか」  俺は美鈴の言葉に同意しようとしたが、思いとどまった。 「いや。美鈴、大事な話があるんだ。これから俺のマンションに来られないか?」 「それは、いいけど。和希、体は大丈夫なの?」 「ああ。大丈夫だから。待ってるな」 「分かった。あとでね」  通話を終えると、俺は脱力したようにソファにもたれ、テーブルにスマホを放り投げた。  父親は俺がオメガになったから、美鈴との関係も変わるだなんて言っていたけど、そんなわけはない。  美鈴は優しい子だからちゃんと話せば分かってくれる。  そうだ、オメガ同士のカップルだって世間にはありふれているじゃないか。  俺は自分を納得させると、コーヒーを淹れ、立ったまま飲んだ。  とにかく絶対に唯人と籍をいれたりなんかするもんか。  なんだよ、責任って。  冗談じゃない。  俺は怒りを鎮めるようにゆっくりとコーヒーを飲み、部屋を片付け始めた。  それから三時間後。  インターホンが鳴り、玄関まで美鈴を出迎える。 「体調はどう?これお見舞い」  俺の好きな洋菓子屋のアップルパイをホールで手渡された。 「ありがとう。美鈴」 「ううん。体調悪いならもっと食べやすい物の方がいいのかなって悩んだりしたんだけど」  シャツワンピース姿の美鈴がサンダルを脱ぎ、部屋に入る。 「いや、ちょうど甘い物が食べたかったから嬉しいよ。適当に座って。今、お茶淹れるから」  俺がキッチンでケーキを切ろうと箱を開けていると、ぶつかるように美鈴が背後から腰にしがみついてきた。

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