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第31話

「おい。誰のせいで俺が落ちたと思ってんだよ」  唯人が恥ずかしそうに叫ぶのを見て、俺は更に大爆笑してしまった。  ようやく笑いが治まった俺を、唯人がベットに上がり抱きしめる。 「和希、笑いすぎ」  そう言われて気付いた。  俺はオメガになってから初めて、声をだして笑ったことに。 「今日はもう寝ようぜ」  唯人が言い、俺を抱きしめたまま横になる。 「唯人は帰れよ。そんなひっつかれたんじゃ眠れねえだろ」 「分かった」  唯人は一旦俺から離れ、枕元で三角座りをした。 「ここで和希が眠るまで見守ってる」 「いや、そんなことされたら余計眠れないから」  俺はため息をつくと、布団をまくった。 「分かったよ。隣で寝ていいから」  唯人は嬉しそうに目を輝かせ隣に滑りこむと、俺をぎゅっと抱きしめた。 「苦しいだろっ」 「ごめん」  唯人が腕の力を緩める。  こいつなんか犬っぽいな。待てができない、馬鹿ワンコ。  でもおかしいな。俺、こいつのこと、この前までチーターとかピューマとかそんな肉食獣のイメージだったのに。  考え事をしている俺の額に唯人が口づけを落とす。 「おやすみ。和希」  直ぐに唯人は規則正しい寝息をたて始めた。  オメガになったこと。  唯人の番になったこと。  まだ完全には受け入れられないけれど、少しづつ俺も変わっていけるかもしれない。  そんなことを思いながら、俺は唯人の心臓の音に耳を澄ませ、眠りに落ちていった。

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