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第44話

「行く」  気がついたらそう口にしていた。 「良かった。じゃあ、ホテルの一室借りきったから、そこに来てよ。19時な」 「えっ。そんな大規模な感じなの?」  気軽な身内の集まりだと思っていた俺は、ホテルの一室という単語を聞いて腰がひけてしまう。 「そんな大人数は集まらないよ。ほとんどうちの大学の奴らだから、和希も顔見知りばかりだろうし」  俺はどうしようかと考え、無言になってしまった。 「今回はやめておく?」  唯人が俺の気持ちを慮って問う。  俺は急に自分が他人から逃げ回っている弱虫のような気持になった。 「いや、行くよ。19時な」 「おお。あとでホテルの地図メールする」  通話を切り、俺はクローゼットの中身を点検した。  服装に気を遣う外出など久しぶりだった。  多少嫌な思いはするだろうけど、唯人がいるしな。  俺はいつの間にか唯人の存在を頼りにしている自分を認めざるを得なかった。  ホテルの一室は誰かの誕生日パーティーかというほどゴテゴテと飾り付けられていた。  中央の机にはケータリングの食事がずらりと並び、部屋のいたるところに花とバルーンが飾ってある。  室内にいる人数は、確かにそれほど多くないようだった。  20人ほどだろうか。  俺は同じゼミの奴がいるのに気付き、話しかけた。  首輪をちらりと見ただけで、そいつは特に性差の事には触れてはこなかった。  来週提出の課題について話していると、大学で見かけたことのある男に肩を叩かれ、「唯人が呼んでる」と言われた。  俺は男が指さした方、部屋の奥へとむかった。  そこにいた唯人は完全に王様だった。  唯人は素足に革靴、白のスキニー、紺色のシャツを着て、首元にはシルバーのアクセサリーをつけていた。  そんな恰好で一段高いところに置かれた一人掛けの椅子に座って、ワインを飲む唯人の周りを囲むように、美しい4人のオメガの男女が立っていた。

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