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第32話

「なあ、もう我慢できない……イッっていいよな? 天音もイキたいだろ?」 「ま……だ……ぁ、ああぁっ!」  右足に重心を移して、天音は片足立ちになった。左足を宙に浮かせ、くの字に曲げて幹に添わせると、片手で尻たぶを割り開いて秘処をさらけ出す。  そう考えるのは天音に露出狂の汚名を着せるようで失礼だ。  だが、わたしという覗き見野郎(ピーピング・トム)が茂みに身をひそめていることなど先刻承知で、そのうえで殊更淫奔にふるまっているように見えなくもない。  現に屹立が花芯を出入りする様子が丸見えになれば、これは、わたしにとってはお誂え向きの状況だ。  とはいうものの、その光景は刺激が強い。自然と下腹部に熱が集まり、むくり、と性器が頭をもたげる。 「あっ、さわ、るな……」 「だって、天音の……ぬるぬるだ。イケよ、俺も一緒にイクから、な?」  哲也はペニスをひと撫ですると、天音を幹から引きはがした。つながりを保ったまま、地べたに腰を下ろした。  そして、つっかい棒を()うように、すらりとした足の間に膝をこじ入れる。下肢がMを形作るように調節すると、和毛(にこげ)に手を伸ばした。  ペニスを掌に包み、穂先を指の腹でこね回す。  不意に猛烈な怒りが湧いた。(ほしいまま)に天音を貪る青年を激しく憎んだ。  なぜなら天音はある意味、妻の分身だ。ゆえに天音に君臨してしかるべきなのは、この、なのだ。  天音を蹂躙するのは、わたしでなければおかしい。若僧の分際で人のものを穢すとは、はなはだもって許しがたい。  自分の心の揺らぎに、ぞっとした。わたしは、これでも良識派だ。にもかかわらず、うずくまって義弟が男と番うさまを盗み見る。  しかもジーンズにオナモミをいっぱいつけて、みじめったらしい。  ねばっこい汗が、こめかみを流れ落ちる。手の甲でぬぐい、ずり落ちた眼鏡を押し上げた。無意識のうちに握り寄せていた石を投げ出し、蹴り飛ばした。

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