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第33話

 まさか、この石で哲也の頭をかち割ってやるつもりだったのか? 脳漿(のうしょう)をまき散らすさまを眺め下ろして溜飲を下げるつもりだったのか?   違う、いかがわしい雰囲気に毒されたにすぎない。でなければ独りよがりの三段論法を展開したあげく、天音を奪い返しにいきたいという衝動に駆られるわけがない。 「天音……天音……好きだ、天音……っ!」  絶頂に達するまで、おそらく秒読み段階に入った。抽送に加速がつき、肉が肉を打つにぶい音がこだまして、わたしを惑わす。  四つん這いになって、茂みの隙間に額を押し当てた。前にのめりすぎて、がさり、と枝葉が鳴った。  天音が睫毛を上げた。焦点がぶれがちな視線が流れて、わたしを捉えた。  まずい、怒張の形を赤裸々に映し出すジーンズを見とがめられたら申し開きができない。  頭を引っこめかけた。その瞬間、哲也が天音を力いっぱい抱きしめた。びくびくと全身を震わせて、もの狂おしく抜き差しを刻む。精が放たれる様子が、手に取るようにわかる。 「ま、……だ……っ!」  天音は、哲也を肩ごしに睨んだ。乳嘴(にゅうし)を自分でつまみ、内腿をすり合わせるようにして地面を踏みしめると、猛りがなかば以上姿を現わすほど腰を浮かせて、打ち振った。 「ぁ、……ぁあーっ!」  嬌声がほとばしり、野鳥が羽ばたいた。ペニスが反り返り、少し遅れて淫液がしぶいた。  白濁は放物線を描いて葉叢(はむら)に飛び散り、その光景は嫌悪感と獣欲がない交ぜになった感情を、わたしに抱かせた。 「やり足りない、天音も一回じゃ物足りないよな? このまま、もう一回……いいよな?」  哲也が象牙色のうなじを吸い立てる。ペニスに掌をかぶせると、残滓を塗り広げるように指を蠢かす。 「おれは、すっきりした。意地汚いやつには、つき合いきれないね」  今の今、よがり狂っていたそぶりなど微塵もみせない。それどころか、天音は未練げもなく腰を浮かせた。  ずるり、と抜きとられた陽物はいまだにそそり立ち、(みだ)りがわしげにてらてらと光る。

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