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ルキと希夢の出会い

 一階が騒がしかった。 「パパ、帰ってきたの?」 「お友達を連れてきたそうだから、希夢様は五階から出ないでください」  前園さんに言われ、違和感を覚える。  僕はヴォワ・ラクテのソウヤさんと会ったことがある。  父が連れてきて、にこやかに僕に紹介した。  確か三つの時だったと思う。  父は必ずしもすべての人に僕の存在を隠しているわけではなかった。  安心できると思った相手は家に連れてきて、紹介した。  そして、何度もつれてくる。  ソウヤさんは一年間に三回ぐらい遊びに来た。  お酒をほとんど飲まない人で、βで大人しい人だそう。  デモテープを作っている二人に、 「良い曲だね」 っと、褒めるとソウヤさんはにっこりと笑った。  ルキさんは一度もつれてきたことがない。  過去に大喧嘩したと父は言ってた。  気が荒いし、Ωの僕を見たら何をするか分からないって。  けど、気になった僕は四階まで下りて、会話を盗み聞いてしまった。 「レン。ヤラせろよー」  声を聞いてはっとする。  ルキさんの声だ。 「ムリだって」 「横になってるだけでいいから」 「ふざけるな。帰れ!」  どういう関係か、子供の僕には分からなかった。 「仲良くしろよ」 「前園はいつも優しいな」  ルキさんは前園さんに甘えている様子だった。  前園さんは、父の旧友だ。  β男性でうちで家政婦さんをやっている。  親友だと父は言ってた。  明け方になり、帰ったかなと思って三階まで行く。  酔った父はぐっすりと眠っていた。 「へえ。あいつ、こんなの隠してたのか」  突然声がし、はっと振り向くと、テレビでよく見るルキの顔があった。 「レンと幽の子どもだろ、おまえ」 「うん」 「俺は……」 「ルキ」 「知ってるんだ。おまえは俺の子どもになるはずだった」 「……? 分からない」 「スマホもパソコンもないのか?」 「ない」 「良い事を教えてやるよ」  三階には父の仕事用のパソコンがある。 「yuu0429がレンのよく使うパスワードだ。これで、パソコンもレンのスマホも見れる」  ルキさんがパソコンを起動させると、世界中のニュースがまとめられたサイトが出てきた。 「ここに文字を打ち込んで、調べたいことを調べる」 「何が分かるの?」 「いろいろ。そうだな。昔やってたアニメの再放送が観れるテレビ&ビデオエンターテイメントのサービスもある」 「文字の打ち方が分からない」 「触ってたら、そのうち覚える。家庭教師はいて、字は習ってるだろ?」 「うん。楽しいの?」 「どうだろうな。世の中にはもっと楽しい事がある」 「ルキの子ども、テレビで見た。楽しそうにルキと買い物してた」 「悪いけど、こんな小さな子供は勝手に連れ出せねーわ」 「外に連れて行って!」 「もう少し大きくなったらな」  父が起きそうな気配がした。 「じゃあな」  僕は五階へ、ルキさんは二階へと逃げた。

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