6 / 39

第6話

悲しい再会をしたのは学園祭だった。 一応、赤司様は表向き孤児を引き取って、子供として育ているという事になっている。 なので、人に慈善事業とアピールする為に、教育に関してはきちんと高校まで学校を出させてくれている。 だから俺も、赤司様の息が掛かった学校に通っていた。 赤司家の人間は、容姿端麗、成績優秀かスポーツ万能のどちらかが必須だった。 俺は必死に勉強して、スポーツも頑張った。 いつしか学校内外で俺の名前は知れ渡り、それが余計赤司様のご機嫌を上々にさせていた。 今まで何人もの女の子に告白されても、俺は微笑んでお断りして来たせいで、いつしか「みんなの光輝様」と呼ばれるようになった。 そのお陰でなのか、学園祭は毎年かなりの賑わいを見せていた。 俺の写真撮影はNGにさせてもらっているので、あまり学園祭当日は外を出歩かないようにしていた。普段は伊達眼鏡を掛けて、前髪を下ろして顔を出さないようにしていた。 通学もアキラの送迎で通学して、表立って顔が割れないように努めた。 それは…両親が俺の事を見たら悲しむだろうと思ったからだ。 そんな時、文化祭でトイレから戻る途中、中学校の制服を着た女の子と正面衝突をした。 自分の胸の辺りの身長しか無い女の子が、驚いた顔で俺を見上げた。 その子は俺の顔を見ると頬を染めて 「あ……すみません」 と頭を下げる。 「いえ。こちらこそ、気付かなくてごめんね」 そう言って微笑むと 「桜子!こっちこっち」 と呼ばれていた。 俺はまさか……と思いながら、その少女に 「あの……もしかして、拓殖桜子さん?」 と声を掛けてしまった。 すると少女は驚いた顔をして俺を見ると 「え?なんで知ってるんですか?」 そう言って俺の顔を見つめた。 幼かった桜子が、中学生の制服を着ているのが感慨深かった。 すると桜子を呼んでいた友達が駆け寄り俺を見ると 「あ!赤司さん。桜子、赤司さんと知り合いだったの?」 っと、桜子に頬を染めて話し掛けた。 「え!ううん」 桜子が不思議そうに俺の顔を見て、首を横に振る。 「ごめんね。俺はきみが小さな頃に会っていて……つい、懐かしくて」 苦笑いを浮かべた俺に、桜子は頬を染めたまま 「もしかして、兄のお友達だったんですか?」 そう叫んだ。 すると友達が 「出た!桜子のお兄ちゃん話」 って溜め息を吐く。 「なんでよ!お兄ちゃんは、私たち家族を守る為に死んだんだよ!」 そう叫んだ。 そう。俺はあの後、両親に手紙を書いた。 桜子には、俺が死んだ事にしてもらったのだ。 俺は桜子に小さく微笑み 「まぁ……そんな所だよ。会えてよかった」 そう言って俺は桜子に背を向けた。 「あの!」 桜子に呼び止められても、俺は振り向かずに片手を上げてそのままその場を離れた。 「あれあれあれ?珍しく女の子に声掛けちゃって。どうしたの?」 8人兄弟で、俺と同じ歳の逸人が声を掛けて来た。 俺が無視をすると 「赤司様にチクッちゃおうかな〜」 そう言われて俺が振り向くと、そっと俺の耳元に唇を寄せると 「だから……分かってるよね」 と言って微笑む。 俺は溜息を吐いて 「分かった」 そう答えて時計を見る。 13時少し過ぎた時間か…と考えて、俺は生徒会室へと向かう。

ともだちにシェアしよう!