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第7話

ポケットから鍵を取り出し、会長に連絡を入れる。 『どうした?』 赤司家の一つ上の宏が電話に出る。 「俺、会長室借りる」 手短に言うと溜め息が聞こえた。 「もちろん、借りは返す」 と言うと 『そんな風に言うな。相手は逸人か?』 そう聞かれて俺が無言でいると 『終わったら連絡しろ』 とだけ言って、宏は電話を切った。 「ひろ兄、なんだって?」 逸人が俺にしなだれかかるように聞いて来るのを無視して、俺は鍵を開けて中へと入る。 「終わったら連絡しろだと」 「へぇ〜。大変だね、光輝は…」 そう言うと、学生服のブレザーを脱いでハンガーに掛けると、俺の上着を脱がせてハンガーに掛けて俺に近付く。 会長室の3人掛けのソファに並んで座ると、逸人が俺の首に手を回す。 「今日はめちゃくちゃに抱いて欲しいな」 甘えたように言われて、俺はネクタイを外しながら 「冗談。赤司様にバレたら、お前が大変だぞ」 そう言って唇を重ねる。 舌を絡めてキスをしながら、俺は逸人のネクタイを外してとシャツのボタンも手早く外す。 うっとりとした顔をする逸人に 「本当はどうされたい?」 と、甘く囁く。 「恋人みたいに…抱いて…」 そう言われて 「了解…」 と答えると、俺は逸人の要望に応えるように逸人の好む男を演じる。 赤司家では、序列が重要視される。 でも、そんなのは表向きだ。 実際は影ではいじめが普通に横行され、強姦なんかも普通にある。 俺はアキラに守られていたので、そういう類の虐めに遭った事は一度も無かった。 しかも、俺の顔や身体に傷を付けようものなら、赤司様の逆鱗に触れるのが怖くて誰も手出ししては来なかった。 でも、鬱憤は溜まっていたのだと思う。 アキラに他の8人の特徴を頭に叩き込まされた。 長男はアキラ。次男は眼帯をしいる雪雅。 2人は俺たちより13歳年上だった。 3男はアキラ達より3つ年下の葉月。 4男は葉月の1つ下で夏樹。 5男は葉月の2つ下の敦史。 アキラと雪雅を除く上の3人は本来ならタチのタイプなのだが、タチを無理やり組み敷くのが大好きな赤司様の悪趣味で、無理矢理抱かれているタイプ。 6男の大希敦史の1つ下のネコ…いわゆる抱かれる方が良いタイプで、気質はわがままで気まぐれ。 そんな自由奔放さが可愛がられているらしい。 7男がさっき電話してた宏。 生真面目でこいつも本来はタチなのを、無理矢理組み敷かれているタイプ。 8男が今、俺に抱かれている逸人。 こいつはネコで、抱かれたいタイプ。 我儘だけど、基本的には人懐っこい。 ただ、数少ないネコなので、大希も逸人も上の3人に輪姦されていた。 真面目な宏は、唯一我関せずだったらしい。 そして俺の下に2人。 一個したの剛志と総士が居る。 この2人はどっちも有りで、その分、上の奴らに良いようにされているらしい。 俺は現場を見た事も無いし、アキラもその辺はその内嫌でも知るから、今は知らなくて良いと言われてしまってそのままだ。 俺はアキラから、赤司様に喜んでもらう術だけではなく、男を抱く方法も教わっていた。 もちろん、抱いたのはアキラな訳だけど…。 「ここで上手く生きて行きたいなら、8人兄弟を上手く手懐けろ」 と言われた。 「お前は容姿に恵まれている、それを利用しない手は無い」 と言われ、中学生に上がった頃から1人ずつ1人ずつ落としている。 初めは3男の葉月。 気位が高く嫌みなタイプだが、特別扱いされるのが大好きな奴。 俺は葉月が1人で居る所を狙って話し掛けた。 葉月は本が好きで、度々書庫に籠もっているのを調べた。 必ず書庫に現れる時間に合わせて、調べ物をするフリで近付く。 ベタな、同じ本を取ろうとして手が触れ合い、俺は恥じらうように 「葉月兄さんと同じ本が読みたくて…」 と、目を潤ませて見上げる。 「お前…赤司様のお気に入りなんだから、近付くなよ!」 邪険にされても、俺は葉月の手を取り 「葉月兄さんとだけは、仲良くなりたいんだ」 と、健気さをアピールした。 「な…んでだよ」 腰が引けている葉月に、俺は俯いて 「そんなの…葉月兄さんが、兄弟の中で一番素敵だから…」 そう言って微笑む。 「でもお前、アキラの息が掛かってるって知ってるんだからな。そうやって俺を陥れるつもりだろう!」 と言われて手を振り払われる。 わざとよろけて、傷付いたように払われた手を握り締め 「俺…そんなに嫌われてたんですね」 そう言って涙を浮かべ 「それでも俺。葉月兄さんが…」 と言い掛けた唇を塞がれた。 それからは、みんなの目を盗んで葉月と書庫で身体を重ねた。 跡を付けたら大変な事になるので、葉月は慎重に…それでも激しく求めた。 そしてこんな情報を漏らすようになる。 「お前が来た時は、みんなお前に腹を立ててたけど、今ではみんなお前を狙っているんだ。そんなお前が俺だけのモノなんて…」 そう言ってキスを落とした。 (なるほどね…) キスに応えるフリをしながら、俺は次の作戦を考えていた。

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