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第8話

それからの俺は、一人、又一人と誘惑をして自分の駒になるように落として行く。 アキラの情報を元に、相手が俺に抱く幻想を演じて、時には淫らに…時には恥じらいながら抱かれ、時には荒々しく…、時には優しく抱いた。 「あっ…ん、光輝?」 俺の首に腕を回し、俺の下で喘ぐ逸人が頬に触れる。 「何を考えて…るの?」 キスを求められながら聞かれ、逸人に意識を戻す。優しく笑顔を浮かべ 「逸人と出会った頃を思い出してた…」 そう言って、唇を重ねる。 逸人を落とすのは簡単だった。 元々、俺に対してそういう視線を送られ続けていたので、気付かないフリをして焦らした。 焦らして焦らして、交わす視線で誘惑を続ける。そして中2の夏。 逸人が見ているのを知っていて、大希を抱いた。大希の部屋と逸人の部屋は同室で、敦史のベッドで抱いている姿をわざとみせたのだ。 「あっ……光輝…、凄いっ……快いっ!」 ガツガツと腰を激しく打ち付け、仰け反る大輝の身体を抱き締めてキスを交わしながら、部屋を覗いて固まっている逸人を見つめた。 逸人は俺と視線が合うと、慌てて踵を返してその場を立ち去った。 後は簡単だった。 学校の昼休み、呼び出されて体育倉庫に呼び出される。 ベタだなぁ~と思いながら向かうと、逸人が立っていて 「お前……、大希が好きなのかよ」 思わぬ言葉に目が点になる。 (ここで…好きと来たか……) 愛だとか恋だとか…そんな幻想が一番遠い場所に居るからこそ、逆に求めるのだろうか? そんな事を考えながら、俺は小さく微笑み、逸人の髪の毛にそっと触れる。 そして髪先にキスを落とし 「逸人はどう思う?」 と耳元で甘く囁く。 すると逸人は俺に抱き着き 「敦史なんかを抱くなら、俺を抱いてよ!光輝」 そう言って瞳を閉じた。 顎を掴み、柔らかい唇に唇を重ねる。 軽く触れて離れると、逸人の舌が俺の舌を求めてチロチロと動く。 舌先を軽く甘噛みすると、ビクッと身体が波打つ。 腰を抱き寄せ、噛み付くように唇を重ねる。 この日を境に、俺と逸人の関係が始まった。 「光輝……っ、もう……」 俺の身体に傷を付けられない逸人は、俺の上着のシャツにしがみつく。 逸人の達くタイミングに合わせて、俺も中へと欲望の塊を吐き出す。 終わった余韻を噛み締めさせるように、すぐには抜かずに抱き締めて額にキスを落とす。 逸人は余韻を甘く味わいたいタイプなので、納得するまで抱き締めてキスを交わす。 「ねぇ…光輝。どうしたら俺だけのモノになるの?」 甘えたように俺の胸に頬を寄せ、呟く。 「逸人……」 困ったように笑う俺に、逸人は頬を膨らませて 「なんでみんな、光輝は赤司家みんなのもので平気なんだか意味分からない」 と呟いた。 「赤司家みんなのもの」だって? 違うだろう。 俺たちはみんな、赤司様の所有物だろうが…。 心の中で毒を吐き、顔では笑顔を作る。 「逸人、俺達の1番は赤司様だろう?そんな我儘な所も可愛いけど」 そう言って、両頬を手で優しく包んで軽く口付けを落とす。 「光輝……大好き」 逸人はそう言って唇を重ねると 「お願い…もう1回抱いて…」 と、甘えて強請る。 「逸人はいけない子だね」 そう言って顎を掴んだ瞬間、会長室の真の持ち主が戻って来た。

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