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第24話

「俺は時々、お前が怖くなるよ…」 ポツリとアキラが呟いた。 大学に到着して、車から降りるとアキラも降りてそう呟かれた。 「逸人のあれ……。赤司様の性格上、お前が庇ったりなんからしたら、益々逆鱗に触れるんじゃないか?そして…お前の株は上がる」 小さく呟かれ、俺は小さく微笑む。 「アキラのお陰だよ」 そう言って、俺はアキラの頬にキスをする。 「お前…」 今、目の前で目を座らせるアキラに 『見た目だけのお馬鹿ちゃんでは、この屋敷では生きて行けない』 と、あの屋敷に連れて来られて最初に言われた言葉。 俺が大学に通えているのも、アキラのお陰だ。 俺にありとあらゆる知識を与え、勉強から何から何までアキラから学んだ。 大学に近付く少し手前で、髪の毛をぐしゃぐしゃにして伊達眼鏡を掛けると、猫背にして大学の門を潜る。 屋敷以外で俺の容姿に振り向く奴は居ない。 高校でそこそこ名が通ってしまい、赤司に大学へ行くのを渋られた。 だから、むさ苦しい姿で通う事を条件に、大学へ通っている。 すると 「光輝」 と、名前を呼ばれた。 ゆっくりと振り向くと、小倉さんが立っている。 「名前、気安く呼ばないで下さいよ」 睨み付けて呟くと 「じゃあ、赤司君か?」 小さく笑い、当たり前のように俺の隣に並ぶ。 「何の用ですか?」 小さな声で話すと 「用事が無いと、お前に会っちゃいけないのか?」 と言われた。 俺は溜め息を吐いて 「警察って、暇なんですね」 そう嫌味を吐いてやった。 こいつ…小倉直也は、何故か初めて会った日から俺にあれこれ付き纏う。 「婚約者が居る」と聞いているので、俺に恋愛感情で近付いているのでは無さそうだが…。 いつもにこにこしていて、何を考えているのか分からない分得体が知れなくて苦手だ。 宏とは仲が良かったらしいが、首を傾げてしまう。 「それで?本当に何の用ですか?」 そう言って睨み上げると、急に俺の前髪を手で上に上げて顔を覗き込んで来た。 「そんなに前髪で顔を隠したら、折角の美人が台無しだぞ」 なんて言ってやがる。 俺は小倉さんの手を叩き落とすと 「触るな!」 と一言言って、無視して歩き出す。 「お前、復讐なんて下らない事、考えるなよ」 ポツリと言われて、ギクリと足を止める。 「復讐なんて、後で自分を苦しめるだけだ」 そう付け加えると、俺の胸ポケットに家の鍵らしき物と住所が書かれた紙を入れた。 「俺の部屋だ。何かあったら、いつでも頼って来い」 と言われて、俺は唖然とした顔で小倉さんを見た。 すると、俺の眉間に指を刺し 「誤解すんなよ!アキラから、お前が危ないかもしれないと相談されたんだ。あくまでも、お前の避難場所だ」 そう言って俺に背を向けた。 「俺は硬い野郎の身体より、柔らかい女の子の身体が好きなんでね。安心しろ」 俺に背を向けて、歩きながらヒラヒラと手を振って去って行った。 「自宅の鍵ねぇ…」 俺は小倉さんの鍵を見つめ、取り敢えず鞄の中へと押し込んだ。

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