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第1話

僕の生家である鵜森家と相楽家は、代々深い縁故関係を続けている。 昔、鵜森家があらぬ疑いを掛けられ、その時の当主に一族郎党抹殺されそうな所を助けてくれたのが相楽家らしい。 その時、鵜森家の男を相楽家に召し上げる約束をかわしたらしい。 鵜森家の男は代々、それは見目麗しい男の子が生まれた。 「男ならば、孕まぬからな……。遊び相手によかろう」 そう言われて、代々鵜森家の長男は相楽家当主の慰みものとして召し上げられた。 時は流れ……この世に3つの種族が現れた。 全てを兼ね備え、美貌、叡智と、将来を約束されたα。 人数も多く、一般的なのはβ そして第3の性別‥‥Ωだ。 相楽家は代々、当主になるのは、より優秀なαと任められた者のみだった。 そんな時、相楽家には恭弥が。 鵜森家には僕が生まれた。 今は医学が進歩して、生まれて直ぐに80%の確率で自分の分類が分かってしまう。 恭弥はαだった。 そして僕は……呪われたΩで生まれてしまった。Ωはαの子を身篭ると、100%に近い確率でαの中でも選りすぐりのαを産み落とすと言われている。 今ではΩは貴重になり大切に保護されているが、Ωが現れた頃は酷い扱いを受けていたそうだ。そのせいで数が激減し、今や都市伝説並になっていた。 そんな中で僕がΩとして認定され、相楽家は狂喜乱舞だったらしい。 直ぐに相楽家に引き取られ、僕は恭弥の番になるべく教育を受けさせられ続けた。 ただ、ずっと相楽家に良いようにされて来た鵜森家だって黙っていない。 直ぐに僕の首に貞操帯を着けて、噛まれないようにしたのだ。 鍵の在処は祖母と僕しか知らない。 その貞操帯は不思議な素材で出来ていて、皮膚のようにフィットして、成長と共に伸びているようだった。 僕はこの貞操帯に守られ、今日まで恭弥に何度も項を噛まれても無事に過ごせている。 恭弥は頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能のスーパーマンだ。 そんな相手が番なら、申し分無いだろうと誰もが口を揃えて言う。 でも、愛の無い欲望を吐き出す為にしか僕を抱かない恭弥を、僕は好きにはなれなかった。 初めて抱かれたのは小学校5年生の時。 現当主の相手……、つまり僕の父親に男の抱き方をレクチャーを受けた最終試験で無理矢理抱かれたのだ。 僕の父親は鵜森家の長男として生まれて、中学からこの相楽家に召されている。 本来、鵜森家の男は女を抱けないのだが、親父は相楽家の使用人の女性を妊娠させてしまったのだ。 それ以来、相楽家の当主しか入れない離れに幽閉されているらしい。 「おい、セックスの最中に考え事とは余裕だな……」 毎日、恭弥の好きな時に好きな場所で身体を開かなくてはならない。 僕は今、部活後の更衣室で後ろから恭弥に貫かれていた。 「そんなに余裕なら、もっと激しくしてやらないとな!」 そう言うと、僕の両手を掴んで激しく腰を降り始めた。 「やぁ!」 仰け反り悲鳴を上げる僕に、無遠慮に打ち付けてくる恭弥を憎いとさえ思う。 顎を捕まれ、無理な体勢からキスをされる。 この愛の無い関係に、僕は意味を見出せないでいた。 「月夜、お前は誰のモノだ?」 後ろから抱き締められ囁かれる。 (ダレノモノ?……ボクハ、ボクダ……) 心の中で呟く。 「答えろ!」 最奥を深く突かれ、グリグリと腰を回しながら叫ばれて 「き……恭弥の……で……す……」 必死に言葉を紡ぐ。 恭弥のモノだと誓わされる度、僕の中で何かが剥がれて落ちて行く……。 僕はこのまま、恭弥の所有物になるしかないのだろうか? 子供だけは出来ないように、中学生の時にはっきりとΩと診断されて以来、ヒートの抑制剤と一緒にこっそり避妊薬を飲み続けている。 ただ、僕は未だにヒートは来ていない。 僕にとって、身体を繋げる行為は苦痛以外の何ものでもなかった。 だからなのだろうか? 僕のような呪われた鵜森の人間には、愛する人と触れ合い結ばれるのは物語の中だけの話のように思っていた。 そう…、彼に出会うまでは…。

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