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第23話

「どうして?」 僕はぽつりと呟く。 「どうして僕みたいな人間に、恭弥も日浦太陽も大事にしてくれるんだよ…」 涙が溢れて来る。 乱暴に抱かれた方が楽だった。 その方が、罪悪感を感じる事が無いだろうから…。 そう考えて、ふと恭弥が乱暴に抱いていたのは、僕に恭弥への気持ちが無い事に対して罪悪感を感じさせない為だったのだろか?と考えてしまった。 そんな事…恭弥本人にしか分からないし、今となってはどうでも良い話なのに…。 僕はまだ、こんな風になっても恭弥に縋ってしまう自分に情けなくなる。 「月夜!」 両頬を挟まれて顔を上に向かされ、ハッとして日浦太陽を見上げる。 悲しそうに僕を見下ろす日浦太陽に、僕は恭弥だけじゃなくて日浦太陽さえも傷付けようとしてしまっている自分に気付いた。 「ごめん…、太陽…」 首に手を回しぎゅっと抱き付くと、日浦太陽は優しく僕の身体を抱き締め 「10年以上一緒に過ごしたんです。すぐに忘れられる訳、無いの分かってるんです。俺こそ、月夜先輩にそんな顔をさせてごめんなさい」 と答えた。 「このまま…全てを忘れる位に抱いて…」 僕の言葉に、日浦太陽は応えるように激しく僕の身体を抱いた。 血塗られた呪われた一族に生まれ、僕は幼い頃から相楽の欲望を受け止める器として生きて来た。 反発しながらも恭弥に惹かれずにはいられなかったのは、脈々と受け継がれた血がそうさせるのか。 それとも…別の感情なのか…。 重ねる肌の温もりも、身体を穿つ灼熱の楔も僕の身体に刻まれているのに…。 僕を抱く日浦太陽の肌に爪を立て、僕は一筋の涙を流した。 恭弥の事で泣くのは、これで最後にしよう…そう決めて…。

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