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第26話

アウトレットに着くと、僕はお目当ての食器屋さんに行き、自分のお茶碗を選んでいた。 すると話に夢中になっている2人組がぶつかって来て、思わずお茶碗を手から落としてしまった。 (割れちゃう!) そう思った瞬間、ふわりとコロンの香りがして、僕の落としたお茶碗をコロンの主が素早くキャッチした。 「すみません、ありがとうございます」 笑顔でお礼を言って、相手の顔を見て息を飲んだ。 「き……恭弥……」 2年振りに会った恭弥は、同じ歳とは思えない程に落ち着いていて、見た目も物凄くカッコよくて思わず見蕩れてしまう程だった。 「どうして此処に?」 驚いて呟いた僕の言葉を拒否の言葉と思ったらしく、恭弥は悲しはそうに微笑んで 「会社の取引先に呼ばれてな……。偶然、見掛けて、声を掛けるつもりは無かったんだ……。嫌な思いさせて悪かったな」 そう言って僕に背を向けた。 僕は慌てて恭弥のジャケットの背中を掴み 「違う」 必死に絞り出した声に、恭弥が振り向いて疑問の視線を向けた。 「違うんだ。……ずっと、ずっと会いたかった」 涙を浮かべて吐き出した僕に、恭弥は目を見開いて僕の顔を見つめた。 「俺を……憎んで無いのか?」 恭弥の言葉に、僕は首を振って恭弥を見つめる。 恭弥は信じられないという目で僕と見つめ合っていると、恭弥は辛そうに眉を寄せて僕から視線を逸らし 「分かったから……。手を…離してくれないか?そうじゃないと……」 そう言いかけた恭弥に首を横に振り 「嫌だ…折角久しぶりに会えたのに…」 僕はそう言って恭弥の背中にしがみついた。 「月夜…」 恭弥はぽつりと呟くと、僕の手を取って 「近くに部屋を取っているんだ。…来るか?」 戸惑い気味にそう言われて、僕は迷わず頷いた。 「お前…分かってるのか?」 恭弥の言葉に、僕は恭弥の手を握り締めた。 すると恭弥も僕の手を握り締めて歩き出した。 アウトレットモールから程近いホテルに入ると、エレベーターに恭弥は胸ポケットからカードキーを出して差し込む。 するとエレベーターに表示されていない階へと進み、エレベーターを下りて廊下の最奥の部屋に恭弥はカードキーを差し込んで中へと招き入れた。 ドアが閉まるのと同時に、僕達は抱き合って唇を重ねる。 服を脱ぐのも焦れったくて、キスをしながら衣類を脱ぎ捨て、縺れるようにベッドに倒れ込み舌を絡ませて貪るように互いを求め合う。 「月夜……悪い。優しく出来そうにない……」 そう言われて、僕は恭弥の背中にしがみつき 「優しくなんかしなくて良い……」 恭弥の頬を両手で触れて、キスの合間にそう答えて再び唇が重なり合う。 「んっ……ふぅ……っ」 恭弥の頬を挟んでいた手を掴まれ、熱に浮かされたようにキスを交わす。 恭弥の綺麗な筋肉に覆われた肌を撫でて、コロンの香りか、僕の知らない2年間を突き付けてきて胸が苦しくなる。 「コロン…纏うようになったんだね…」 そう言うと、恭弥は悲しそうな笑顔を浮かべて 「お前の香りが恋しくてな…」 と言って僕を抱き締めた。 ずっと……触れたかった人が、今、僕を抱いている。 ……それだけで身体が熱くなる。 「恭弥……」 愛しい人の名前を呼ぶと、恭弥が僕の手を強く握りながら頬に頬を擦り寄せ 「1日だって……お前を忘れた事は無かった……」 そう言われて、涙が溢れ出す。

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