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どっちもできます

※  ぼくが黙っていても男の人は構わず接してくれた。思った以上にぼくの存在を許してくれている。邪険に扱うこともないし、かといってこれまでの飼い主達のような扱いもしなかった。  それが逆に、あまりにもぼくの人生には長いことなかったもので、ぼくの方がよっぽどこの状況に不慣れで困っていた。  当たり障りなく、余計なことはしないようにこだわるとなおさら自分が動物のように思えた。  ご機嫌をとる必要もない。望まれるようにすることもなくて、ただ、ここにいることを許されてる。お腹が空いたら頭を擦って、シャワーの時は男の人が目配せのようにぼくを見てくれるから、その内ぼくも自分から今がいいと伝えるようにもなった。シャワールームの前に移動して、男の人を見るだけだけれど。  意外にも、喋らないぼくが目や行動で表すものを、男の人は理解してくれた。本当は全然変わらない表情の下でとんでもなく困って、はじき出した結果なのかもしれない。そうだとしたら、なんだか少し、ごめんなさい。  許されて、時間が経って、何日後だろう。  最後にしたのはリョウジ君に捨てられて男の人に拾われたあの日だけれど、それまでの毎日はぼくの状態も構わずしていたことも、ここに来てからはしていない。  男の人が眠っている間と仕事でいない間に済ませていたトイレと一緒にしてしまおうとも思ったけれど、もし、今日仕事から帰って来た男の人が遂にそういう考えになっていたらと思うとひとりでしてしまうのは気が引けた。もしもそれが条件になってしまったら入口がもう、よくない。これまでの飼い主と完全に違うとは、まだ思いきれていないから。  でもそろそろ限界です。  おなかが空いてひもじかった日よりもつらいかもしれません。  今日も、男の人は当たり前にぼくを部屋に残して仕事に行ってしまった。男の人が部屋を出て、薄暗くなるちょっと前から部屋の中には目にうるさいネオンが差し込む。この色に反してなんにもない、うるさいくらい性欲を煽る色なのに、この部屋ではなにもない。  もやもやして、待って、今日はもうずっともやもやして待った。  深夜も過ぎてもう少ししたら明け方にもなる頃に男の人が部屋に戻って来た。昨日よりは少し遅くて、いっそうもやもやした。  もしかしたら男の人は、自分のことだけは外で済ませているのかもしれない。そういえば男の人はなんの仕事をしてるんだろう。そういう仕事だったりしますか、だから性欲を見かけないのかもしれない。でも全然そんな風には見えない。やっぱり違うかもしれない、ホテルとかの管理人みたいな人ならそれっぽい。受付から顔が見えないあの感じ、すごくそれっぽい。  ご飯をくれてる時、その手ごと食べてやろうかと思った。シャワーの時もいっそここでとも思った。  でも、どれも我慢したんで、もう限界です。  なにごともなく眠ってしまった男の人を見て、もう、なにをどうしてやろうと考えた。これだけ目にうるさいネオンもこれだけ効果がないなら、もう他の色でもいいんじゃないかとか、そんなことも考えた。  どうしてですか。これまでの飼い主達はぼくを持ち帰った後一日も起きませんでした。やっぱり違いますか、こっちの人じゃないですか。そういえばシャワーでもなにもなかったんだった。裸だったけど、本当に自分の子供でも洗うかみたいでしたもんね。でもそれはもう、悲しいです。  多分、ぼくはすごく情けない声を出して男の人にすり寄って、覆いかぶさった。もう無理です、みたいな、ほんとうにぐにゃぐにゃした声を出してた。でも全然起きない。一回寝たら起きないっていう人、初めて見たかもしれない。じゃあなんで仕事の時は起きられるのか、逆に怖い。  五分以上は、男の人の上でうごうごしてた。起きて欲しくて頭を擦りつけては確認したけれど、変化はなにもない。  でもぼくは変化してしまいました。我慢し続けてる分も、起きてくれたらって期待してる分も。  起きませんか。ぼくとしませんか。最悪ぼくがします。起きませんか。  男の人の体をまさぐって、どこにあるかわからないはずもないものを触った。もちろん硬いわけもない。ふにゃふにゃなそれを触ってると、もう、切ない。当然で、ふにゃふにゃなのがどんどん形のあるものになっていく。  このかたさが好き、指で押してはっきりしてるの。  これをくれませんか。口でもおしりでも、どっちでもいいです。  切なくなって、ちょっと腰を押し付けてみたらどんどん切なくなってきた。  でも、それ以上にもう腰が止まらない。もっともっと、押し付けて、擦り付けて、動いてしまう。 「おい」  この声をずっと待っていたけれど、いざとなるとすぐに顔を上げられなかった。怒られたらどうしよう、まだなんにもわからない人にこんなことをしてる罪悪感で、正直怖くなってしまった。  男の人は咳き込んで、この状況に焦っているようだった。そうですよね、そうだと思います。いきなりだったかもしれないけど、でも我慢したんです。  男の人は慌てて起き上がろうとして、起き上がりたくはないけれどぼくも落ちそうになって余計男の人にしがみつく感じになってしまった。手に持ったものも離さないで。  これが欲しい。口でもおしりでもいいから。  もう怒られても構いません。いっそ怒りながらでもいいからぼくでしませんか。そういうのは割と、よく出来る方です。  顔を上げると、男の人は完全に困っていた。戸惑っていたのかもしれないけど、差がわからない。  でも、嫌がってはいなかった。  だから、お願いしますって擦り寄った。もうわかるでしょ、わからないはずはないと思います、だって手の中ではわかってるから。  もう我慢出来そうにないです。  頭の中がそれしかなくて、擦り寄ったついでにもう舐めてました。ごめんなさい、でもぼくはどっちも出来るし、割とどんな内容なのも出来るから、そこはこれまでの飼い主に感謝して。 「ハッカ、お前、相手選べよ。おい」  もう止まりません。止めるならどうにかしてください。手も止まりません、だってどんどん大きくなるから。  この男の人は、いろんなことにスイッチでもあるのかもしれない。  ずっとぼくにされるがままだったのに腕を掴んでまとめ上げるのもその力も、なんかもう急だった。  あんな、沼みたいに昏い目をしていて性欲もまるでないみたいに大人しかったのに、することは想像の斜め上どころじゃない。リョウジ君の非じゃなかった。乱暴さの方向性は、全然違ったけれど。  まとめられた腕が、ぼくに着せていた服で縛られた。がっちり縛られたせいで全然、びくともしない。  そのまま、ぼくにはなにもさせてもらえなかった。  男の人のモノに手を伸ばしたら掴まえられて、ほんの少しも触らせてくれない。かわりにぼくのを掴んで、擦る。搾るみたいに強くて腰が浮く。  見下ろしてぼくのを擦る目はあの昏さままなのに、ぼくが反応するところを見つけると、確認するみたいにまた、する。昏いのに、どんよりとしてるのに、そのどんよりが全部欲の重みみたいだった。  こっちもあっちも、ずっとされる。腕は結ばれてるのに、それもおさえられてしまう。  おしりを触られて、入ってくる指はもうぼくので濡れてすんなり奥までいってしまった。指が長い、一本でも久しぶりで、欲しくて、欲しかったから、なんどか出し入れされたら少し出てしまった。  もっと、もっと欲しい。して欲しくて腰が揺れる。そうしたらぼくのモノまで咥えて、おしりをしてくれた。  指がふえた、きもちいい。舌がぜんぶを舐めてくれる。熱い、やわくて狭い喉まで咥えて、根本を唇で食むみたいに圧がかかる。舌が動く、喉が動く。飲み込むみたいにされて、おしりがぎゅっとなった。  指が動く。ゆっくり、ゆっくり抜き差しされて、じれったさに足が開いてく。  男の人が自分のを取り出した。少し扱いたけど、しなくてもいいくらいだった。  入ってくるとき、ぼくのことをじっと見てた。まるでじぶんのものでぼくがどう感じてるのか、ぜんぶ見るみたいだった。  ゆっくり入ってくる、拡がる入り口と突き当たった奥がきもちいい。  腰を振りながら、男の人が上半身の服を脱いだ。なんだか荒っぽくて、凄く好きだった。  乱暴なことばもいわない、強くあたられることもない。でも、すごく支配欲のつよいセックスをするひとだった。すこしでもぼくに判断させないような、優先権をあたえないような、ぜんぶじぶんできめるっていうのは、なんてことばだったかな。  腰をつかまれてよこ向きになって、十字みたいになる。  縛ってあるうでをおさえて、ぼくを見る。まるで確認するみたいな動き。  繋がってるところの音がすごい。あふれた泡が弾けて散る感触もする。こぼれて、おしりから落ちてく。  ぼくのも擦られる。先端を親指で、なんどもなんども。  なんかいめかでもう無理で、ぜんぶ出てくみたいになった。それでも擦る男のひとの手がどろどろになって、ぼくのはどこかに入ってるみたいにぬるぬるになった。  うしろから入って、肩をおさえられたらなにかをつかむことができなくて、じぶんのてにじぶんのがとびちってる。  膝がたたない。おしりをあげてられなくなって、男のひとがなんどもおしりだけをもちあげる。  もちあげたおしりをぬるぬる出入りする。そこからあふれたのと、ばかになったみたいに漏らしてるぼくのでたいへん。  きもちいい、おしりがずっとひくひくする。  すごい音する。ぬるぬるどころじゃない、きっと、たぶんぬるぬる以外の、それいがいのも出た。もうだって、のこってないくらい出た。でも声だけは、ちゃんとがまんした。  どうしよう、きもちいい。  このひとの、するの、すき。

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