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第17話

  「たわけ! 今どき小学生でも、もう少し洒落たデートプランを立てるぞ。第一、想像してみろ。三十路(みそじ)の男とマッチョな青年がお手々つないでチイパッパなど、キモい云々という次元を通り越してギャグだ」    ばしん、と背中をどやしつけられた。スレンダーな見た目を裏切る怪力に、横座りに体勢が崩れた。それは「よよ」と泣き沈む、か弱き乙女といった体だ。 「大人には大人にふさわしいつき合い方というものがあって、特にフィジカルな面においての相性のよさは、我々の今後を左右する大切な要素だ。早瀬にしても心身ともに健康な男子である以上、おれにキスしたいと思ったことが一度ならずあったはずだ」    どきり! 「懺悔するなら今のうちだぞ。おれを押し倒して合体する場面が脳裡をよぎればムラムラときて、(おの)が男根を握りしめ、いかがわしい行為におよんだな」    ぎくり! 営業日報に判をついてくださる御姿や、ややこしい電話の最中に眉根を寄せる御姿をはじめとして、就業中に心に刻みつけておいた数々の艶姿(あですがた)を夜な夜な『あんなこと』や『こんなこと』に使わせていただいております。それは冒瀆につき悔い改めろ、と面罵されても、ぐうの音も出ません。  やましいところがある、と顔に書いてあったのかもしれない。咲良さんは俺に冷たい一瞥をくれた。それから、椅子の背もたれを抱え込む形に座面を跨いだ。眼鏡のブリッジをひと撫ですると、視線を虚空にさまよわせながら、聞こえよがしに呟いた。 「夢の中でおれを獣欲の捌け口したあげく、目が覚めたらパンツががびがびになっていたことも、あったに決まっている」 「めっ、滅相もございません!」 「ほう……自分は性欲とは無縁であり、即ち、欲求不満に悩まされたことはないと言い張るんだな。では、ここにぶら下げているものはただの飾りなんだな」 「はぁ……うっ!」  おみ足が、おみ足が、股ぐらめがけて飛来した。狙い過たずスラックスの前立てを捉えると、ファスナーの内側に微妙な振動を与えながら、土踏まずが行きつ戻りつする。  そうです、伝説の電気アンマをかけられたのでありました。

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