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第18話
爪先で幹の輪郭を撫で上げられると自然と腰がもぞついてしまうのに、咲良さんときたら、
「早瀬が真実、悟りの境地に達したのか否かテストしてやる。動くな」
ん、な、殺生な!
もしや『咲良さん好き好き』をこじらせたすえに、女王さまモードが発動と相成った御方に無体なことを要求される、という夢を見ているのかもしれない。だって局部を足で悪戯してくださるだなんて、およそ咲良さんのキャラにそぐわない所業だ。
だが、しかし、かかとがファスナーにめり込んでくるたびにシモの毛が攣 れる。ぴりりとした痛みが、どこからどう見てもこれは現実の出来事だと教えてくれる。
と、いうことは……うっかり勃っちゃったとたん、不合格の判定が下されて、恩寵を受けそこなうのは鉄板だ。
けれどムスコは節度に欠ける。はっきり言って、むくむくと頭をもたげてきております。
「おや、硬いものが足の裏に当たるぞ。早瀬はズボンの中にニンジンを隠し持って歩いているのか」
「そんなケッタイな趣味はありません!」
それ以前に愚息は、最大エレクト時には小ぶりのゴーヤ級というシロモノだったりして。決して自慢じゃないです、念のため。
朝な夕なに咲良さんで「すっきり」してきた以上、当然の報いなのでしょうか。不心得者を懲らしめるというより、言葉攻めの趣 がある一幕にたじたじとなって、俺はもはやなすがまま。
ともあれ下賤 の輩 にお灸を据え終わった、という心理状態にあるのかもしれない。ひとしきり前立てをかかとでこねくり返すと、咲良さんは一服つけた。
紫煙がたなびき、にわかに愁いを帯びて見える横顔は、つい今し方まで股間をいたぶっておられた方と同一人物と思えないほどの静謐さをたたえている。
咲良さんは、思案気に中指でこめかみを揉んだ。煙草をへし折ると、うってかわって白い歯をこぼした。
それは天使の笑顔だ。なのに邪悪なものがスプーン一杯程度、垂らされていて、爛漫の笑顔をくすませているように感じられるのは目の錯覚かしらん?
我が身が可愛ければ今すぐおいとましたほうが賢明だ、と訴えかけてくるものがあるのは、虫の知らせというやつでしょうか?
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