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第23話

 できた、と咲良さんが呟いた。ボウルを床に置くと、満足げに眼鏡をひと撫でした。 「昭和のスケベ親父風の言い方をすれば、干しぶどうのチョコレートがけの完成だ。なかなか美味そうな出来栄えじゃないか」 「はあ……納得がいくものができてよかったですね。チョコボンボンの作り方を教えたのは確かに俺ですけど、よりによって、こんな小汚い乳首で練習してみようだなんて酔狂もいいとこですよ」 「いや、早瀬のこれは」  くっ、と押されて乳首が乳暈にめり込んだ。  かと思えば親指と人差し指でつままれて、すり合わされた。チョコが溶けて、すべっこい指が褐色に染まっていくにつれて、びりびりするものが全身を駆け巡る。  俺はうろたえた。赤ちゃんにおっぱいをあげる予定がない男にとって、乳首の存在価値は「あっ、あるな」以上でも以下でもないのだ。  というより、俺が咲良さんの乳首をいじりたおしたいと毎晩、祈りを捧げてきたのだ。ともあれ恋情が摩訶不思議な作用を引き起こすのか、乳首をぴんと弾かれるとムスコが反抗期に入るのは避けられない……! 「屈強な体軀に比して、ちんまりした乳首。そのアンバランスさが可愛いと思うぞ」  真顔でそう弁じると、すらりとした足をさばいて俺に馬乗りになった。俺の肩の両脇に手を突くと躰を前に倒し、胸元に顔を寄せてきた。 「干しぶどうのチョコレート風味。遠慮なく試食させてもらうとしよう」 「かっ、課長、変なものを食ったら腹をこわします! 俺の乳首は東南アジア諸国の生水以上に病原菌がうようよしています!」    と、叫びざま強引に寝返りを打とうとした。しかし咲良さんは一枚も二枚も上手(うわて)だ。太腿に膝を載せてこられて、動きを封じられたうえで乳首をついばまれた。  驚愕のあまり躰が強張ると、その隙をついて舌が奔放に閃く。掘り起こすように乳首を唇の上下で挟まれて、さらに食みつぶされる。

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